※画像はイメージです/PIXTA

在宅療養支援クリニック かえでの風 たま・かわさき院長の宮本謙一氏は、患者さん宅を訪問するとよくペットに出会うといいます。本記事では、医師が実際に見てきた「在宅療養患者とペットとのエピソード」をご紹介します。

「ペットとの日々」が認知症の進行を遅らせたワケ

認知症が進行すると、次第に時間の感覚が失われ、毎日昼まで寝ていたり、昼夜逆転気味になったりする方も多くなります。

 

しかしその患者さんは、1日3回の犬の散歩を日課としており、雨の日も雪の日も、必ず早朝に犬に起こされて散歩に出掛けていました。認知症の進行を遅らせるためには運動がとても大事です。

 

1日3回の散歩はややハードに思えますが、その患者さんの身体機能を維持するには十分な運動量であり、その効果かどうかは分かりませんが認知症の進行も非常にゆっくりで、まさにペットのおかげで独居生活が継続できているという状態でした。

 

愛犬のことを語る患者さんはいつも笑顔で、ペットが患者さんに笑いをもたらし、笑いが患者さんの健康維持につながっていると思われました。

 

ところがある日、患者さんとの会話の内容はほぼいつもどおりでしたが、患者さんの表情がいつもと違うことに気づきました。ふと隣の部屋をのぞくと、ケージの中にいるはずの犬がいません。詳細については聞けませんでしたが、何らかの原因で急逝したとのことでした。

 

その日を境に、患者さんの認知症は一気に進行していきました。散歩という日課がなくなり、生活リズムが乱れ、昼夜逆転気味になりました。初めは夜間に廊下などに放尿するようになり、次第に日中にもおかしな行動を取ることが増えていきました。記憶力は著しく低下し、1日2~3回きちんと食事を取ることも難しくなっていきました。

 

初めはいわゆる「ペットロス症候群」による一時的な症状悪化と考えましたが、明らかに認知症自体がどんどん進行していき、愛犬の死から数ヵ月後、独居生活を諦めて特別養護老人ホームに入所することとなりました。

 

振り返ると、ペットの存在がいかに大きなものだったかが分かります。多くの患者さんにとって、ペットは癒やしや生きがい、笑いを与えてくれる、かけがえのない存在です。在宅療養中でペットを飼っている患者さんには、困難な状況でもペットは手放さず、良い関係を続けていただければと思います。

 

 

宮本 謙一 

在宅療養支援クリニック かえでの風 たま・かわさき 院長

 

 

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※本連載は、宮本謙一氏の著書『在宅医療と「笑い」』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

在宅医療と「笑い」

在宅医療と「笑い」

宮本 謙一

幻冬舎メディアコンサルティング

在宅医療は、通院が難しい高齢の慢性疾患の患者さんや、がんの終末期の患者さんなどが、自宅で定期的に丁寧な診察を受けられる便利な制度です。 メリットは大きいのですが、うまくいかないときもあります。 医師や看護師…

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