「ばらばら」「ごちゃごちゃ」「でたらめ」自治会分裂の実情
では、その中である号棟の33世帯の移転を例として、いかに住民が分散されるのかを詳細に見てみよう。この33世帯は、4号棟へ1世帯、6号棟へ3世帯、7号棟へ7世帯、1号棟へ8世帯、2号棟へ7世帯、3号棟へ7世帯が移転した。住民たちは、このような移転方式で近隣が「ばらばら」「ごちゃごちゃ」「でたらめ」になったと表現する。
移転はたいていブロック化された区域内で行われるため、ある程度自治会のまとまりが維持されるが、かなり離れている号棟へ移転する場合も少なくない。
それゆえ、住民たちからは、「私はEから来たが、周りはWで、挨拶だけ」「今の号棟の空いている6軒は抽選漏れの人が来るのを待っている」「好きなお部屋を選ぶので隣り近所はめちゃくちゃ」「他所には行きたくないということはあるけど、同じ棟に入れないのは仕方ない」といった言葉も耳にした。移転が完了してからは、空いた建物の取り壊し工事が行われた。
住民たちは、建替えにより都営団地間の「住民交換」のような移転が行われているとも語っていた。東京都東部住宅事務所の桐ヶ丘団地建替えの担当者は、小さい団地の住民は、桐ヶ丘団地のような大きな団地に移転したりもするので、自治会の分裂はやむをえないと語った。
そこで、建替え第2期のK自治会の住民たちに対する3回の集団インタビュー(2012年11月の2回と2013年11月の1回)などを通じて、建替えが同時に行われている北区の都営団地における移転の仕方を見てみる。