※画像はイメージです/PIXTA

相続税申告では、その気がなくても申告漏れとなってしまいがちな財産があります。相続税の申告漏れを指摘されると、多額の追徴課税がかかることも。今回は相続財産の申告漏れで最も多い財産について解説していきます。

相続税の申告漏れ財産「その他」の中身

その理由について、公表されているデータがないため筆者の推測になりますが、申告漏れ相続財産の「その他」として考えられるのは、大きく分けると下記の3つです。

 

① 預け金、貸付金

② 生命保険契約に関する権利

③ 生前贈与加算、相続時精算課税適用財産

 

ひとつずつ、確認していきましょう。

 

■ 預け金、貸付金

これらは名義預金の兄弟のような財産です。名義預金は預金口座がまるまる被相続人の財産である場合、その「全額」を被相続人の預貯金として計上するものですが、預け金や貸付金は預金の「一部」のみを財産計上する場合に利用します。

 

たとこれえば被相続人である夫が妻に生活費を渡しており、妻がそのお金を妻名義の口座にプールしていたとします。この預金口座には妻自身の年金や過去に働いていた時の給料が原資となっている部分もあり、夫と妻のお金が混ざっています。このような場合、資金移動が確認できる部分を合理的に計算して、(夫から妻への)預け金や貸付金という項目で財産計上することになります。

 

なお、預け金、貸付金は名称が異なるだけで、合理的な金額で財産に計上されていればどちらで計上しても税務署が問題視するようなことはありません。

 

■ 生命保険契約に関する権利

被相続人である夫が妻に対して終身保険をかけていた場合、夫の相続で死亡保険金は受け取れませんが、その保険契約は妻の死亡時まで継続します。仮に夫の死亡時に保険を解約すれば、保険会社から解約返戻金を受け取れますので、相続税では保険契約自体を財産とみなして「生命保険契約に関する権利」として財産に計上します。

 

夫が契約者であれば計上漏れの可能性は少ないのですが、妻が契約者で夫が保険料を負担していると、一見相続とは関係ないように見えるため、計上が漏れる可能性が高いことが想定されます。

 

実務上は被相続人が契約者となっている保険のみならず、家族名義で契約している保険についても保険料を被相続人が負担していなかったか確認することが必要です。

 

■ 生前贈与加算、相続時精算課税適用財産

被相続人から相続人や遺言で財産を貰った人に対して相続前3年以内に生前贈与(暦年贈与)があった場合、これを相続税の計算に加算する必要があり、これを「生前贈与加算」と言います。

 

税務調査の中で相続人に対する贈与があったことが判明したような場合、生前贈与加算をして相続税の修正申告をすることがあります。贈与が相続開始年以外のときは贈与税の期限後申告と納税(贈与税以外に無申告加算税と延滞税を含む)も必要です。なお、相続開始年の贈与であれば贈与税は非課税とされており、相続税で生前贈与加算のみすればよいことになっています。

 

また、期間に関係なく相続時精算課税を選択した贈与があった場合には、これを相続財産に含める必要があり、これを「相続時精算課税適用財産」と言います。

 

相続時精算課税は平成15年以降にできた制度ですが、2,500万円の特別控除があるため贈与税は納税をしていないことが多く、申告したこと自体を相続人が忘れているケースがあります。税務署は相続時精算課税の申告データを保管していますので、漏れがあれば即時指摘が可能です。

 

■まとめ

相続税の税務調査において申告漏れがあった場合、通常であれば追加で相続税を納税するほか、過少申告加算税や延滞税の負担が生じます。調査があった場合の修正申告の割合は約85%と非常に高く、余計な税負担を避ける意味でも申告すべきものは当初申告において申告書に反映させることが肝要です。

 

特に「その他」財産は意図せず申告から漏れることが多い財産ですので、気を付けていただければと思います。

 

税理士法人ブライト相続
北川 聡司

 

 

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