あなたが勤めている会社の未来は大丈夫ですか?
あるとき知人を介して、筆者のもとに相談者がいらしたことがありました。大手新聞社にお勤めの30代の方です。
新聞社の仕事にはとても意義を感じている。しかし、このまま今の会社にい続けて、本当にいいのかどうか、と。聞けば、同期のなかには外資系のウェブメディアやIT系のメディアベンチャー企業などに転職していった人もいるそうです。
話を聞いていて、典型的な例だな、と思いました。
大手新聞社では今、新聞の発行部数が毎年約5%ずつ落ちています。これは公表されていることでもあるので驚くことではないかもしれませんが、働いている人たちは、この数字を冷静に受け止める必要があります。
毎年約5%ずつ減っているということは、単純計算で100あった部数が10年後には60を切ってしまう、ということになるからです。実際には、そんなことにはならないのかもしれません。
しかし、新聞社の経営がかなり厳しくなっているのは事実です。新聞という本業の事業は赤字で、不動産事業で利益を上げている会社もあるほどです。過去には、倒産を経験している新聞社もあります。
もちろん新聞社のなかでも50代、60代のベテラン記者は逃げ切れるかもしれません。しかし、40代以下はどうなのか。あと20年、会社は今のような給与水準で社員を雇うことができるかどうか。
それを察知したからこそ、転職していった同期がいたのだと思うのです。
職場からの強いバイアスで、現実が見れなくなっている
ところが、この方は悩んでおられました。筆者に対して新聞の社会的意義や自分の仕事がいかに大切な仕事なのかを力説されるのです。しかし、ではなぜこのような苦境に陥っているのか、ということについて質問しても、なかなか明快な返答が得られませんでした。
言い方は厳しいですが、見たくない現実を見ていないのではないか。筆者にはそう見えました。おそらく、上司も、先輩も、職場全体がそうなのだと思います。そして、どうすればこの状況を脱することができるか、についても思考は止まってしまっている。
間違えてはいけないのは、選択するのは消費者だということです。消費者が価値あるものだと思えば、そのサービスを購入しますし、そうでないと思えば買わない。それが、資本主義のメカニズムです。そこに厳しい目で向き合い、消費者が本当に求めているものに応えてくることができたのかどうか。そこにこそ、意識を向けないといけない。
結局、何度もやりとりをして、ようやく真意を理解してもらえました。しかし、そのためには大変な時間がかかりました。いかに周囲からの強いバイアスに押しやられ、「洗脳」されていたか、ご本人が気づいて驚くほどでした。