税理士に止められても、大人気ステーキ丼専門店が「原価率50%」にこだわったワケ

中村 朱美
税理士に止められても、大人気ステーキ丼専門店が「原価率50%」にこだわったワケ
(※写真はイメージです/PIXTA)

営業はランチのみ、どんなに売れても1日100食限定と、従来の業績至上主義とは真逆のビジネスモデルを実現する京都の国産牛ステーキ丼専門店『佰食屋』。税理士から真剣に止められた「原価率を高める」という、一見非効率な戦略にはどのような意図が隠されていたのか、見ていきましょう。※本記事は『売上を、減らそう。たどりついたのは業績至上主義からの解放』(株式会社ライツ社)から一部を抜粋・再編集したものであり、本文中の店舗情報は現在と異なる場合があります。

宣伝費を原価に上乗せし、お客様に宣伝していただく

2012年のオープン当時、日本ではまだインスタグラムのユーザー数は限られていましたが、わたしは大きな可能性を感じていました。思わず写真を撮りたくなるような見た目にするには、どう盛り付けようか。どんな食器やトレーを使おうか。食べてみたら、どんな発見や驚きがあるだろうか…。

 

そう考えて、商品を完成させました。こうして生まれた佰食屋のメニューは、「みんなに教えたくなる」ものばかりです。

 

そして、わたしは「広告費は一切使わない」と宣言しました。来られたお客様が喜んで、満足してくれれば、おのずと口コミで広がっていくはず。お客様一人ひとりがトップセールスマンになってくださるはず。

 

では、そこでなにを最大の売りにするのか。それはやはり、コストパフォーマンスでした。関西の方は人一倍、価格に対する意識が高く、「これめっちゃコスパええやん」と特に評価してくださいます。

 

飲食店の場合、「メニューの原価率は30〜40%に設定するのが鉄則」と言われています。それを佰食屋は無謀にも50%に設定したのです。当然、担当の税理士からは「ホンマに止めたほうがいい」と真剣に止められました。

 

けれどもわたしは、そこだけは譲りませんでした。仮に原価率を40%に設定したとしても、思うように売上が伸びなければ、広告宣伝費をかけることになります。原価率40%に広告宣伝費を10%上乗せするくらいなら、はじめから50%に設定しておけばいい――。

 

そう考えて、よりどりの食材を選びました。オープン当時、はじめの1ヵ月こそ「失敗した」と悔やんでいましたが、おかげさまで、いまでは毎月のようにメディアに取り上げられます。

 

個人のSNSはもちろん、食べログやGoogleローカルガイドなどの口コミサイトにも感想や写真が投稿され、みなさん、嬉しい声を寄せてくださっています。それは、決して見た目だけではない、「来てみてがっかり」のない商品力が産んでくれた評価なのだと思います。ここまで来れば、経営はとてつもなくシンプルなものになります。

 

1日100食限定、ひたすらにおいしいメニューを、圧倒的なコストパフォーマンスで提供し、お客様に心から満足いただく。マーケティングや売上分析、経営コンサルティングなど必要ありません。

 

 

中村 朱美

株式会社minitts

代表取締役

 

 

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中村 朱美

ライツ社

各メディアで話題沸騰中の「佰食屋」店主、初の書き下ろし著書。 ・ランチのみ、の国産牛ステーキ丼専門店 ・どんなに売れても、1日100食限定 ・営業、わずか3時間半 ・インセンティブは、早く売り切れば早く帰れる ・飲…

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