(※画像はイメージです/PIXTA)

これまでのエネルギーは、火力発電や原子力発電など、大規模な施設で生み出されるものがほとんどでした。しかし、われわれの身の回りには、小規模ながらエネルギーをを生み出す仕組みも多数存在します。「もったいない」という思いを大切に、SDGsの精神基づいた発電も視野に入れていくことが重要です。※本記事は、齋藤勝裕氏の著書『脱炭素時代を生き抜くための「エネルギー」入門』(実務教育出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

振動力発電は歩くだけで得られる?

◆振動力発電◆

圧電素子を敷いた道を人が踏む、クルマが走るだけで発電する。効率は低いが、コストも安価で済む可能性。

 

街は騒音と振動であふれています。大きな街では、毎日何万人という人が駅や繁華街の周りを歩き回ります。そして歩くたび、一歩ごと大地を蹴ります。このため、歩道の石畳は擦り切れ、舗装されていないところでは土埃が立ちます。このエネルギーはすごいものです。

 

車道では、1トン(1000㎏)以上の重さの自動車が人と荷物を載せて移動します。つまり通行人が歩き、自動車が走るということは道路にとても大きな荷重を与えているのです。このエネルギーを発電に利用することはできないものでしょうか。

 

●街の振動から電気を生む

 

雑踏の振動エネルギーを電気に変換する方法は簡単です。電気信号を振動に変えて音を出すスピーカーの原理を逆に利用するだけです。つまり、圧力が加わると電気が発生する「圧電素子」を利用して、受けた振動で電気を発生させるのです。それが振動力発電です。

 

[図表4]振動力発電のしくみ

 

しかし、最近東京の繁華街で行なわれた実験結果では、極めて微弱な電力しか得ることができなかったようです。中央環状線を用いた実験によれば、60×30㎝の大きさの発電ユニットを10台設置して、得られる電力はわずか0.1W時。一週間充電したとしても、20W電球を1時間弱しか点灯させることができない発電量です。

 

ただ、今後の技術開発によって発電能力を百倍程度にすることは可能といいます。たとえば、首都高のトンネル以外の高架部分約235㎞すべてに発電ユニットを設置した場合、東京23区約400万世帯の使用電力の約40%をカバーできる計算になるといいます。

 

同様の実験を渋谷駅前で、歩行者の歩行エネルギーをターゲットに行なわれましたが、おおむね同じような結果に終わっています。しかし、交通量世界一の渋谷スクランブル交差点・ハチ公前広場全体に約4000基の発電ユニットを設置すれば、一般家庭40軒分に相当する450kwの発電が可能ということがわかりました。

 

しかも、圧電素子の寿命は一般に長いため、いったん設置すれば長期的にコストは低減していくと考えられます。もちろん無公害で環境にも優しい発電技術でもあるので、今後の開発が望まれる技術開発といえるでしょう。

 

 

齋藤 勝裕

名古屋工業大学名誉教授

 

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脱炭素時代を生き抜くための「エネルギー」入門

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齋藤 勝裕

実務教育出版

「2050年までの『脱炭素社会』の実現」を基本理念とする改正地球温暖化対策推進法が成立し、いまや、エネルギー問題については誰もが当事者です。 「そもそも、エネルギーって何だろう」「どんなエネルギーがあるんだろう」…

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