「どうしたらいいかわからない」……NPO法人生活支援機構ALL代表理事・坂本慎治氏が直面した、生活困窮者のリアル。未曾有のコロナショックが続く今、「対岸の火事」だった出来事は、誰にでも起こりうる話になった。 ※本連載では書籍『大阪に来たらええやん!西成のNPO法人代表が語る生活困窮者のリアル』(信長出版)より一部を抜粋・編集し、日本人の悲惨な実態に迫っていく。
「私、何のために生きているんだろう」ゴミ屋敷、そして車中泊へ…38歳・元キャリアウーマンの壮絶 掃除をする気力もなくなり、部屋はゴミ屋敷状態になっていた。(※画像はイメージです/PIXTA)

「はよ持ってこんか!」38歳女性が経験した壮絶介護

「仕事や住まいを失う」。そのようなことは「対岸の火事」くらいに思っていた人が、2020年に巻き起こったコロナショックのあおりをもろに受け、現実として、仕事や住まいを失う。そのようなことが増えています。

 

ある日、コロナ禍での人員整理の影響で職を失った女性が、「生活支援機構ALL」に相談に来ました。

 

彼女は38歳。数年前までは、両親とともに穏やかに暮らしながら、自身もバリバリと仕事をしていました。しかし、父親が他界したことから歯車が狂い始めます。

 

残された母親は認知症を発症。やむを得ず、介護施設に入所することになります。施設に頼れたことで負担は多少和らぎますが、それでも介護から完全に解放されるわけではありません。仕事を頑張り、家に帰ったらすぐに母親の元へ着替えやおむつを届ける毎日が続きます。

 

次第に、仕事中にも施設の職員から「お母さん、ティッシュがなくなったんです」「パンツがなくなったんです」とSOSが入るようになります。仕事を抜け出して施設に向かい、必要な物資を届け、汚れた洗濯物を回収して、洗濯してまた仕事……。それでも、認知症の母親は感謝の気持ちを示すことはありません。むしろ「はよ持ってこんか! アホか! ボケ!」と理不尽に罵られるばかりだったと言います。

 

「私、何のために生きているんだろう」。彼女の心はどんどん荒んでいきました。