生活困窮者の相談に乗り、生活保護の申請を手助け、住まいを紹介するNPO法人・生活支援機構ALL。「困っている人はぜひ、大阪に来てほしい」と代表理事の坂本慎治氏は語る。同氏曰く、「西成」と「生活困窮者」「怪しい支援業者」には深い関係があるようだ。 ※本連載では書籍『大阪に来たらええやん!西成のNPO法人代表が語る生活困窮者のリアル』(信長出版)より一部を抜粋・編集し、日本の悲惨な実態に迫っていく。
「生活保護費を奪い取る」ホームレスを狙う、怪しい支援業者の実態 (※画像はイメージです/PIXTA)

電車賃は「ウチ(市役所)が出します」…西成に集まる困窮者たち

西成区・あいりん地区には日々、いろいろな地域から生活困窮者が集まってきます。

 

全国の行政でも、自分たちの地域で手が回らない生活困窮者には「西成までの片道切符代を提供する」という取り組みをしているところもあるくらいです。

 

大阪府は、47都道府県の中で最も多く「居住支援法人」が存在しています。それだけ、生活困窮者を支援する体制が整っている地域ということです。私が「大阪に来たらええやん」と訴えるのは、ここにも理由があります。

 

そして全国の行政でも、「大阪に行ったらええやん」と考える部分がどこかにあるのでしょう。これは決して「他人任せ」という意味ではなく、「体制が充実している大阪に行ったほうが、結果的に生活困窮者も幸せになれる」という意味です。

 

私もかつて、ある県のある市役所から「生活困窮者が大阪に行きたいと言っている。こちらとしても、どうにか大阪に行かせてやりたいんです」という要請を受けたことがあります。

 

「電車賃はどうするんですか?」と聞いたら、「ウチ(市役所)が出します」と答えます。そして実際、市の支援によって西成に来たある生活困窮者は、今度は私たちの支援によって生活保護を申請し、住まいを借り、新しい生活を始めました。

 

本人の希望があれば、西成への移住を支援する動きも増えつつあるのです。

 

行政に片道切符をもらってまで、生活困窮者はなぜ、西成に来たいと思うのか。

 

一言で言えば、それはやはり、「西成に行けば、自分も受け入れてもらえる」と考えるからでしょう。

 

どれだけ生活が貧しくても、「自分の居場所がある」というだけで、人は明るく生きられます。

 

新しく居場所を求める誰をも、温かく受け入れ、見下さない。

 

居場所を失った生活困窮者たちは、西成の「包容力」に惹かれ、この地を目指すのです。