電車賃は「ウチ(市役所)が出します」…西成に集まる困窮者たち
西成区・あいりん地区には日々、いろいろな地域から生活困窮者が集まってきます。
全国の行政でも、自分たちの地域で手が回らない生活困窮者には「西成までの片道切符代を提供する」という取り組みをしているところもあるくらいです。
大阪府は、47都道府県の中で最も多く「居住支援法人」が存在しています。それだけ、生活困窮者を支援する体制が整っている地域ということです。私が「大阪に来たらええやん」と訴えるのは、ここにも理由があります。
そして全国の行政でも、「大阪に行ったらええやん」と考える部分がどこかにあるのでしょう。これは決して「他人任せ」という意味ではなく、「体制が充実している大阪に行ったほうが、結果的に生活困窮者も幸せになれる」という意味です。
私もかつて、ある県のある市役所から「生活困窮者が大阪に行きたいと言っている。こちらとしても、どうにか大阪に行かせてやりたいんです」という要請を受けたことがあります。
「電車賃はどうするんですか?」と聞いたら、「ウチ(市役所)が出します」と答えます。そして実際、市の支援によって西成に来たある生活困窮者は、今度は私たちの支援によって生活保護を申請し、住まいを借り、新しい生活を始めました。
本人の希望があれば、西成への移住を支援する動きも増えつつあるのです。
行政に片道切符をもらってまで、生活困窮者はなぜ、西成に来たいと思うのか。
一言で言えば、それはやはり、「西成に行けば、自分も受け入れてもらえる」と考えるからでしょう。
どれだけ生活が貧しくても、「自分の居場所がある」というだけで、人は明るく生きられます。
新しく居場所を求める誰をも、温かく受け入れ、見下さない。
居場所を失った生活困窮者たちは、西成の「包容力」に惹かれ、この地を目指すのです。