「民間住宅を利用した住宅セーフティネット」をコンセプトに、住まいに悩む生活困窮者へ、賃貸住宅への入居をサポートする「大阪居住支援ネットワーク協議会」。「居住支援には大家さんの理解が必要」と代表理事の坂本慎治氏は語る。しかし受け入れに好意的でない場合も往々にしてあり…。 ※本連載では書籍『大阪に来たらええやん!西成のNPO法人代表が語る生活困窮者のリアル』(信長出版)より一部を抜粋・編集し、日本の悲惨な実態に迫っていく。
不動産会社「最悪や」…生活保護受給者から見える、日本社会の悲惨 (※画像はイメージです/PIXTA)

なぜ生活保護受給者の受け入れは進まない?

知り合いの大家さんの意見を聞くと、住宅確保要配慮者の受け入れには次のような懸念があることが明らかになりました。

 

※ 「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律」において、「低額所得者」「被災者」「高齢者」「障がい者」「子育て世帯」と定められている。

 

●家賃を滞納する

●孤独死(単身高齢者を受け入れた場合)

●騒音(精神障害の症状などによるもの)

●家賃未払い、かつ家具放置のまま夜逃げ

●住宅確保要配慮者を受け入れたことによる他住民のクレームや退去

 

どれも、「不安に思うのはごもっとも」と感じるものばかりです。

 

だからこそ、私たちの出番だとも感じています。これまで、3000件以上の居住支援に携わってきました。「生活困窮者を入居させたら、はいさようなら」の団体ではありません。生活困窮者の相談にも、そして大家さんの相談にも、永遠に乗り続けます。

 

だからぜひ、住宅確保要配慮者への居住支援に手を貸していただきたいのです。

 

残念なことに、生活保護受給者を毛嫌いする大家さんも、なかにはいます。

 

しかし、これまでに1万人以上の生活困窮者の相談を受けてきた私は、自信を持って言えます。

 

生活保護の受給者は決して、そんな悪い人ではありません。「常識的」な人間ばかりです。

 

見る側が偏見を持っているから「あまり近づきたくない人たち」と感じるだけで、本人自体はいたって常識的です。

 

もともと社会人としてバリバリ働き、しっかり納税していた人がほとんどなのですから、それも当然といえます。

 

大阪でも、とある地域の不動産屋では、「生活保護者が来たら、最悪や」が共通認識になっているところもあります。とくに目に見えて何かの被害があるわけでもないのに、生活保護受給者を受け入れてくれる大家さんがいないがために、「住居を探すのが面倒→だから最悪」と、生活保護受給者を毛嫌いしているのです。