生活困窮者の相談に乗り、生活保護の申請を手助け、住まいを紹介するNPO法人・生活支援機構ALL。「困っている人は誰でも、門を叩いてほしい」と代表理事の坂本慎治氏は語る。活動を通して感じてきた、現場から行政にいいたいこととは…。 ※本連載では書籍『大阪に来たらええやん!西成のNPO法人代表が語る生活困窮者のリアル』(信長出版)より一部を抜粋・編集し、日本の悲惨な実態に迫っていく。
役所に憤り…「生活保護費をアイドルに使ってしまう人」を助けたいが (※画像はイメージです/PIXTA)

「大阪府」と「大阪市」…二重行政のリアル

大阪では現在、「大阪府」と「大阪市」の二重行政状態が続いています。知事と市長、府庁と市役所がそれぞれに連携し合うことなく行政を運営し、市民がそのあおりを食っているのです。

 

私は2019年、「大阪居住支援ネットワーク協議会」を立ち上げました。「民間住宅を利用した住宅セーフティネット」をコンセプトに、住まいに悩む生活困窮者へ、賃貸住宅への入居をサポートする制度です。

 

立ち上げにあたり、国と府からお金が下りる制度があり、これを活用しました。そのお金は「立ち上げる法人のある自治体の役所と連携して、活動を盛り上げていくために使ってください」という趣旨で給付されています。

 

お金をいただき、「よしっ」と気合いを入れて、ある自治体の役所へ「よろしくお願いいたします」と挨拶にいきました。

 

しかし窓口の担当者は「なんですかそれは?」といった反応です。

 

知らないはずがありません。だって私たちは、国と府からお金をいただいているのですから。

 

私は「上の方につないでください」とお願いしました。ところが、奥から出てきた上司も「知らない」と答え、挙げ句の果てに「帰ってください」と言います。

 

これはおかしい。私はその場で、大阪府庁の居住支援課に電話し、「助成金をいただいたから、お礼とご挨拶にと役所まで来たのですが、誰もピンときていないようなんです」と伝えました。

 

大阪府庁のほうはすんなりと話が通り、「わかりました、私が話をしてみます」と言ってくれます。

 

そこで携帯電話を役所の担当者に渡し、「大阪府庁の担当者」と「役所の担当者」での会話が始まったのですが、どうもその会話も、私が直面したのと同様、まったく噛み合っていないようでした。

 

そこで登場したのが「大阪市」です。「大阪府」と「大阪市」と「ある役所」。それぞれに電話をつないでの、ややこしいやりとりが始まってしまいました。