大河ドラマ『青天を衝け』。放送開始以降、高視聴率を維持し、最近では「平岡円四郎ロス」が報じられるなど、世間の注目は高まる一方だ。本記事では奥野宣之氏編訳の書籍「抄訳 渋沢栄一『至誠と努力』人生と仕事、そして富についての私の考え」(実業之日本社)より一部を抜粋し、吉沢亮演じる主人公・渋沢栄一が実際に記した仕事論を紹介していく。
『青天を衝け』で再び脚光・渋沢栄一「死ぬまで働こう」の真意 ※画像はイメージです/PIXTA

お金持ちだから隠居してもいい、は大間違い

■死ぬまで働く

 

欧米では、老人が死ぬまで働くケースは珍しくない。イギリスのグラッドストン氏にドイツのビスマルク氏、あるいはコッホ博士、イギリスのブース大将といった人々が、死ぬまでその仕事に尽力した。

 

また、昨年亡くなったアメリカのモルガン氏も、七八歳まで働いたし、同じ米国のカーネギー氏、ロックフェラー氏、ジェームス・ヒル氏なんかも、みんな七五、六の老人なのに今も大いに働いて大富豪としてすべきことをやっている。

 

日本においては私程度でも人の目に付くようだが、こんなのは欧米では普通であって、日常茶飯事なのだ。

 

お金持ちだから隠居してもいい、なんて考えるのは大間違いだ。人として世の中で生きる以上、それ相応の働きをしないと存在価値がなくなってしまう。それは言ってしまえば肉の塊と変わりない。私は昔からこういう考えを持っている。

 

■楽隠居なんてやめておけ

 

老人になってボンヤリ暮らしていれば、いかにも体が休まっていいと思うかもしれない。しかし、実際のところ老人になってから頭を使わない暮らしを始めてしまうとどうなるか。健康になるどころか逆にすぐ衰えてしまうのだ。

 

現代は違うが、昔はまだまだ社会的活動のできる余命と健康を持っているのに、早めに子供に家督を譲るケースがあった。楽隠居の身となって、悠々自適に自由な時間を楽しもう、というのが普通に行われていたのだ。

 

こういう暮らしをしていれば、ストレスが少ないのには違いない。だが、こういう人は果たして健康で長生きしたのかといえば、事実は正反対だ。

 

楽隠居した人は、早く死ぬケースが多い。自ら社会の前線で活躍していた頃は、身体も健康で元気も満ちあふれていたが、子供に後を継がせた途端、ガックリ弱ってしまった――。そんな例は現代でも田舎にはたくさんある。