大河ドラマ『青天を衝け』。放送開始以降、高視聴率を維持し、最近では「平岡円四郎ロス」が報じられるなど、世間の注目は高まる一方だ。本記事では奥野宣之氏編訳の書籍「抄訳 渋沢栄一『至誠と努力』人生と仕事、そして富についての私の考え」(実業之日本社)より一部を抜粋し、吉沢亮演じる主人公・渋沢栄一が実際に記した仕事論を紹介していく。
『青天を衝け』で再び脚光・渋沢栄一「死ぬまで働こう」の真意 ※画像はイメージです/PIXTA

「誰も自分の能力に気づいてくれない」と感じるときは

■道をコロコロ変えるな

 

私はいつも若者には「なるべく自分の立ち位置を変えないように」と言っている。

 

昨日は政治家、今日は教育家、明日は実業家というふうに仕事をコロコロ変えるのは、自分のためにならないのはもちろん、国家や社会にもいい結果をもたらさない。これは強調しておきたい。

 

しかし、人はどんな場合でも絶対に進路を変えてはいけないというわけではない。もちろん、個人の考え方によっては、他にどうしようもなくて、変化を余儀なくされることもあるだろう。

 

ただしそんな場合でも、まず道義に基づいているかを考えてほしい。自分の考えを整理し、周囲の事情とよく照らし合わせ、本当に「これでいい」と確信を持ってから断行すべきだ。

 

形勢をむやみにうかがって進退に迷うような状態は、下手な釣り人が、竿を降ろす場所をのべつ幕なしに変えるようなものだ。

 

■人を惹きつける人であれ

 

いくら自分を高め英気を養っていても、その能力が誰からも発見されない、といったケースもときにはある。《略》だから、自分を確立すると同時に、一方で大いに「伯楽」を吸いつける力も養ってほしい。

 

ただ他人が吸い付けてくれるのを待つ鉄のカケラではなく、こちらからすごい力で吸いつける――。そんな磁石にならなくてはならない。

 

これも結局のところ自らの実行と実働にかかっている。実行・実働の若者なら「仕事がなくて困る」なんてこともなければ、社会の中で上手くいかないこともありえない。

 

 

渋沢 栄一

編訳:奥野 宣之