渋沢栄一が考える「適材適所」とは?
④活躍の場を求めて飛び出せ
私の願いは「適材適所」に尽きる。適材を適所に置いて、何らかの成果を上げることは、その人が国家や社会に貢献する一番の道である。また、それはやがて私自身の世間への貢献へとつながっていく。
陰険なやり方で人を惨めな立場に追いやり、思いのまま動く子分として飼い殺す――。私はそんな罪なことは決してしない。
社会における人の活動は自由でなければならない。渋沢のもとにいて「舞台が狭い」というのであれば、即座に渋沢とたもとを分かてばいい。自由自在に、限りなく広い大舞台に乗り出し、思うがまま全力の働きを見せてほしい。
⑤自分の能力を見極めろ
人の才能というのは千差万別だ。必ずしもすべての人が「XXに向いている」と言えるわけではない。
人それぞれ顔が違うようなものだ。ある人は軍人に向いている、ある人は法律家、またある人は美術家、農家、商工業者といった具合に、才能は異なっている。
だから、各自がその天性に応じて国家や社会のために貢献せねばならない。みんながそれぞれの得意分野を発達させるのだ。
つまり、自分の希望、才能・能力に応じて仕事を選び、その方針に従って力を尽くすべきだ。
いったん自分の進む道を決めた以上は、少しくらいは周囲の事情に迷わされることなく、粉骨砕身(ふんこつさいしん)し、それぞれの分野の進歩と発展のために努力する。これがもっとも大切だ。
渋沢 栄一
編訳:奥野 宣之