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バイオ医薬品関連企業の株価動向
5月のナスダック・バイオテック指数(ドルベース、配当含まず)は下落しました。
5月のバイオ医薬品市場は、前月に続いて軟調な展開となり、世界株式のパフォーマンスを下回りました。テクニカル面ではチャート上の下値支持線(サポートライン)に達し、底を打ったように思われますが、投資家心理の改善は見られませんでした。
株価が大きく上昇した銘柄としてはバイオヘブン・ファーマシューティカル(米国)が挙げられます。既に片頭痛治療薬として米食品医薬品局(FDA)の承認を得ている同社のCGRP遮断経口薬リメゲパントについて、新たに片頭痛予防用途での適用拡大が承認されました。
株価が大きく下落した銘柄としてはケモセントリクス(米国)やノババックス(米国)が挙げられます。ケモセントリクスは、FDAに承認を申請中の抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎治療薬候補の治験に係る審査に遅れが生じていることが投資家の動揺を誘い、株価が大きく下落しました。ノババックスは、既に複数の新型コロナウイルス・ワクチンが承認され、接種が進む状況下、治験参加者の確保に困難を極めており、治験に遅れが生じていることなどが嫌気されました。
今後のバイオ医薬品市場見通し
バイオ医薬品セクターについては、短期的には新型コロナウイルスの感染動向とワクチンの動向に注目が集まっています。一部の製薬企業やバイオ医薬品企業は引き続き新型コロナウイルスの治療薬やワクチンの開発を急ピッチで行っています。ワクチンの治験や各国政府によるワクチン接種はすすめられており、現在は生産能力などのボトルネックに注目が集まっています。一方、新型コロナウイルスの影響により検診を控える動きなどがあり、医薬品企業の業績に影響が出ています。また米国で薬価を含むヘルスケア制度全般の改革の動きや、昨年来株価が大きく上昇した一部の中小型銘柄の流動性リスクなども注視していく必要があると考えます。
現在、医薬品に関連する医療費の議論で重要な転換が起こっています。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。
医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む最高の機会となると考えます。
バイオ医薬品関連企業の売上高は相対的に高い伸びが見込まれる
バイオ医薬品関連企業の売上高は、新興国の企業を上回って堅調に成長してきました(図表6参照)。
バイオ医薬品関連企業については、①有望な治療薬候補の良好な治験結果の発表、②大型の新薬の承認、③新薬販売開始後の業績寄与の拡大などを背景に、米国企業や日本企業よりも相対的に高い売上高の伸びが見込まれています(図表7参照)。
売上高の伸びに沿って株価も上昇
過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります(図表8参照)。
バリュエーション
新薬の開発動向が順調に推移していることやバイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目されて株価が上昇しており、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)の水準も上昇しています(図表9参照)。
※個別の銘柄・企業については、あくまでも参考であり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年5月のバイオ医薬品市場』を参照)。
(2021年6月29日)
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