今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、ドットチャートの変化、経済見通し、テーパリング(債券購入の縮小)議論の開始の有無の3点に注目していましたが、公表された内容ではいずれもがタカ派(金融引締めを選好)的でした。特にドットチャートでは利上げ時期前倒しの可能性も示され、今後は従来より利上げ時期を意識した市場展開が想定されます。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

「相続税の税務調査」に 選ばれる人 選ばれない人
>>1月16日(木)開催・WEBセミナー

6月FOMC:市場が注目したドットチャートから利上げの前倒しが示唆された

米連邦準備制度理事会(FRB)は2021年6月15~16日に開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の据え置きや、米国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を400億ドルペースで購入の維持を表明しました。

 

注目のドットチャート(年末の政策金利の水準の想定)では23年末までに2回の利上げを想定する人が過半となりました(図表1参照)。3月のFOMCでは23年に利上げなしが11人いましたが、今回は5人となりました。

 

予測時点:2021年3月(前回、左)、2021年6月(今回、右)、中央値 ※横軸は1回の利上げを0.25%と仮定した場合の回数、各参加者が示した各年末の政策金利の水準を想定される利上げ回数へ置き換え
[図表1]FOMCの政策金利予測から想定される利上げ回数 予測時点:2021年3月(前回、左)、2021年6月(今回、右)、中央値
※横軸は1回の利上げを0.25%と仮定した場合の回数、各参加者が示した各年末の政策金利の水準を想定される利上げ回数へ置き換え
出所:FRBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:FOMC、ドットチャート、テーパリング、利上げ

今回のFOMCでは、ドットチャートの変化、経済見通し、テーパリング(債券購入の縮小)議論の開始の有無の3点に注目していましたが、公表された内容ではいずれもがタカ派(金融引締めを選好)的でした。特にドットチャートでは利上げ時期前倒しの可能性も示され、今後は従来より利上げ時期を意識した市場展開が想定されます。

 

先の注目点を中心に今回のFOMCを振り返ります。まず、図表1で23年のドットチャートを利上げ回数に読み替えると、23年末まで利上げなしはわずか5人と少数派になりました。根拠薄弱ですがFRBのパウエル議長の日頃の言動から、パウエル議長は利上げなしのうちの一人かもしれません。

 

なお、FOMC参加者18人の予想で、その中央値が利上げ回数2回なので、これを利上げ回数の目安としています。同様の読み方で22年末のドットチャートを見ると、18人中7人が利上げを支持しており、3月の4人から増加しています。金利先物などを見ると、市場では今回のFOMC前に23年の利上げは織り込んでいたと見られます。利上げ前倒しと表現されるのは、前回(3月)のドットチャートで23年末まで利上げなしが多数派だったことに由来します。6月のドットチャートで示された23年中の利上げの想定(前倒し)は単に市場予想に近づいただけとの冷静な見方もできそうです。

 

一方、メインシナリオには程遠いものの一応可能性が示された22年の利上げは市場でも十分織り込まれていたとは思えず、今後の動向に一応、注意は必要です。

 

次に、FOMC参加者の経済見通しを見ると、ワクチン接種の予想以上の拡大などを背景に経済認識を改善させています。また、インフレ率予想は21年を1%引き上げ、22、23年も各々0.1%上方修正しています。平均インフレ率を導入した昨年9月のFOMCでは22年のインフレ率を1.8%と予想していました。21年のインフレ率の急上昇は一過性ながら、その先のインフレ率も徐々に上昇しています。もっとも、この程度の水準のインフレ率なら許容範囲とも考えられ、利上げ前倒しの理由には不十分かもしれません。あくまで仮説ですが、本当は資産インフレへの警戒なのかもしれません。市場全体は健全としても、ミーム株など投機的な取引が一部に見られるからです。

 

パウエル議長は会見で事実上のテーパリング議論の開始を微妙な表現ながら示唆しました。5月末にFRBのクラリダ副議長などが今後数回の会合で、議論の開始を求めていたことから、市場では今回は見送るとの見方もありましたが、早期のテーパリングを求める声は強かった模様です。ここで気になるのは23年末を越えての据置を支持したのが5人と言うことです。FRBの執行部は6人のボードとFOMCの副議長の7人です。執行部の意見は同じであることが多いのですが、今回は明らかに執行部内でも23年の政策金利について意見が分かれたことになります。今後、議事要旨や執行部のコメントなどから内情がある程度明らかになると共に、テーパリング時期に加え利上げ時期の特定に市場の注目が集まる展開が想定されます。

 

予測時点:2021年3月(前回)~2021年6月、期間は21年~23年と長期 出所:FRBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]FOMC参加者の主な経済指標の予測(中央値) 予測時点:2021年3月(前回)~2021年6月、期間は21年~23年と長期
出所:FRBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『FOMC、景気回復に確信を強め利上げ予想を前倒し』を参照)。

 

(2021年6月18日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

日本経済の行方、米国株式市場、新NISA、オルタナティブ投資…
圧倒的知識で各専門家が解説!カメハメハ倶楽部の資産運用セミナー

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【1/7開催】<令和7年度>
税制改正大綱を徹底解説
最新情報から見る資産運用への影響と対策

 

【1/8開催】オルカン、S&P500…
「新NISA」の最適な投資対象とは
金融資産1億円以上の方だからできる活用法

 

【1/9開催】2025年の幕開け、どうなる?日本株
長いデフレ環境を生き抜いたスパークスが考える
魅力的な企業への「長期集中投資」

 

【1/9開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【1/12開催】相続税の
「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?
【見逃し配信special】

 

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧