2021年6月FOMCレビュー~想定よりもタカ派的

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●ドットチャートの予想分布が大きく変化し、2023年に0.25%の利上げが2回あることが示唆された。

●メンバーの経済見通しも総じて上方修正、パウエル議長は市場が過度に反応しないようにけん制。

●テーパリングの議論開始は形式上まだ宣言されていないが実質的に今回かなり織り込みが進んだ。

ドットチャートの予想分布が大きく変化し、2023年に0.25%の利上げが2回あることが示唆された

米連邦準備制度理事会(FRB)は、6月15日、16日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、大方の予想通り、ゼロ金利政策および量的緩和の維持を決定しました。しかしながら、今回はいくつかの点で想定よりもかなりタカ派的な会合となり、市場もサプライズと受け止め、大きく反応しました。そこで、以下、重要なポイントを整理しながら確認していきます。

 

今回の会合が、タカ派的な内容となった要因の1つが、FOMCメンバーが適切と考える「政策金利水準の分布図(ドットチャート)」でした。前回(2021年3月)のドットチャートでは、18人のメンバーのうち、2023年末にゼロ金利政策の解除が適切としたのは7人でしたが、今回は一気に13人に増えました(図表1)。この結果、分布の中央値から、2023年は0.25%の利上げが2回あることが示唆されました。

 

(注)経済見通しは今回発表分。単位は%。カッコ内は前回の見通し。実質GDP成長率は10-12月期の前年同期比、物価上昇率は個人消費支出(PCE)ベースで10-12月期の前年同期比、失業率は10-12月期平均。 (出所)FRBの資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]ドットチャートと経済見通し (注)経済見通しは今回発表分。単位は%。カッコ内は前回の見通し。実質GDP成長率は10-12月期の前年同期比、物価上昇率は個人消費支出(PCE)ベースで10-12月期の前年同期比、失業率は10-12月期平均。
(出所)FRBの資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

メンバーの経済見通しも総じて上方修正、パウエル議長は市場が過度に反応しないようにけん制

FOMCメンバーによる経済見通しも改善が確認され、これも今回、市場が早期の金融政策正常化を意識した一因と考えられます。詳細は図表1の通りですが、物価上昇率は2021年から2023年まで、第4四半期における前年同期比の伸び率の見通しが上方修正され、いずれも長期均衡水準を上回る予測値となっています。これらを踏まえると、前述のドットチャートの変化は合理的と思われます。

 

なお、パウエル議長は会合後の記者会見で、ドットチャートでタカ派的な見通しが示されたことについて、計画や決定ではなく、利上げの議論は時期尚早と述べ、市場が過度に反応しないよう、けん制しました。また、量的緩和の縮小(テーパリング)に関しては、今後の会合で、目標に向けた経済の進展を評価し続け、量的緩和の変更前に事前の通知を行うとの考えを示しました。

テーパリングの議論開始は形式上まだ宣言されていないが実質的に今回かなり織り込みが進んだ

今回のFOMCでは、ドットチャートや経済見通しがタカ派的な内容となり、市場は金融政策の正常化が早まるとの見方にいくらか傾いたように見受けられます。実際、6月16日の米金融市場では、米10年国債利回りが上昇し、米ドルが対主要通貨で増価した結果、ドル円はドル高・円安が進行しました(図表2)。また、ダウ工業株30種平均などの米主要株価指数は、軒並み下落しました。

 

(注)データは2021年6月16日21:00から6月17日5:55。日時は日本時間。&(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]米10年国債利回りとドル円レート (注)データは2021年6月16日21:00から6月17日5:55。日時は日本時間。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

なお、テーパリングの議論開始について、パウエル議長は明確に言及しておらず、「今回は議論することについて議論する会合」と述べています。また、FOMC声明でも、議論開始についての新たな文言はみられませんでした。そのため、議論開始は形式上、まだ宣言されていないということになりますが、実質的には今回、かなり織り込みが進んだものと思われます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年6月FOMCレビュー~想定よりもタカ派的』を参照)。

 

(2021年6月17日)

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 チーフマーケットストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介

投資情報グループは、運用や調査経験豊富なプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの情報発信を行っています。幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、年間で約800本の金融市場・経済レポートの発行の他、YouTube等の動画、Twitterでの情報発信を行っています。

著者紹介

連載【市川雅浩・チーフマーケットストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

【ご注意】
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、三井住友DSアセットマネジメント、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料は三井住友DSアセットマネジメントが信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料に掲載されている写真がある場合、写真はイメージであり、本文とは関係ない場合があります。

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!