精神保健福祉士である野坂きみ子の書籍『“発達障害かもしれない人”とともに働くこと』より一部を抜粋・編集し、発達障害の子どもを持つ親たちがさらされてきた、「育て方が悪かったからではないか」という誤謬の背景について見ていきます。

「結婚して子を持って」が下敷きに在り続ける

その昔は日本でも、子どもは幼児を過ぎれば大人で、7歳までは神のうち、7歳過ぎれば労働力として数えられました。しかしその後、児童は小さな大人ではなく、成長、発達に適切な配慮が必要な存在であると認識され始め、児童の発達について研究がなされるようになります。

 

それに続き、人の一生、生まれてから死ぬまでどのような心の発達をするのか研究が進みます。子どもは子どもとして考え、処遇されるべきだし、子どもの時からすでに心理的な発達があり、それは大人まで続くのだから人間一生涯において考えるべきだと考えられるようになりました。

 

教科書によく出てくる研究者としては、S・フロイト(1856‐1939)はじめ、J・ピアジェ(1896‐1980)、L・ヴィゴッキー(1896‐1934)、E・H・エリクソン(1902‐1994)などがあげられます。これらの研究者はおもに20世紀の前半で活躍しました。

 

考え方としては、人の一生はその時期に応じた変化や発達があり、その時々心も変化、発達をするというものです。研究者によって多少違いますが、年齢で区分し発達段階としました。

 

発達段階を最初に提唱したのはR・J・ハヴィガースト(1900‐1991)と言われていますが、その発達段階によると、乳幼児期、児童期、青年期、壮年期、中年期、老年期となっており、その発達段階での発達課題が示されています。概要を見てみますと、

 

乳幼児期(生後から5歳)歩く、固形物を食べる、話す、排泄できる等

児童期(6歳から12歳:小学生の時期)体を使って遊ぶ、仲間と遊ぶ、一般的な読み、書き、計算ができる等

青年期(13歳から22歳:中学生から大学卒業くらいの時期)第2次性徴による体の変化を受け入れる、男性、女性としての社会的役割を達成する、出生家族から情緒的に独立する、経済的独立の目安を立てる等

壮年期(23歳学業終了から40代前半)配偶者の選択、結婚生活の学習、子育て等

中年期(40代、50代)大人としての社会的責任を果たす、一定の経済水準を確保、維持する、加齢の変化を受け入れる、老親の変化に対応する等

老年期(60代以降)老化の適応、退職の適応、配偶者などの死に向き合う等

 

[図表] ハヴィガーストが提唱した発達段階と課題

 

研究者によって発達段階の名称や年令区分は若干違いますが、大筋では、このようなものです。その発達段階の発達課題を達成していくことが、昔は正常発達と呼ばれていましたが、現在は「定型発達」と呼ばれています。達成しなければ正常ではないという考え方が現実的ではなく批判的にとらえられてきたからだと思います。

 

現在、発達心理学というと乳幼児期から思春期くらいの話題が多いです。青年期以降になるとどうもはっきりと言えなくなります。青年期の男女の社会的役割といっても、現在、ジェンダーは評判が悪いですから、そのままでは受け入れられないでしょう。

 

また、およそ社会に出てからアラフォーくらいをさす壮年期、私が学生の頃は「性的にも社会的にも成熟し、伴侶を見つけ、出生家族から形成家族に移行する」と習いましたが、現代では未婚率も高いし価値も一様ではないし、困ります。もちろん人は生涯を通じて変化し、その年代の心の変化や特徴的な心理もあるでしょう。しかし発達課題として提示されると、その時代のライフコースを下敷きに考えられていることがわかります。

 

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本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『“発達障害かもしれない人”とともに働くこと』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

新・健康夜咄

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髙山 哲夫

幻冬舎メディアコンサルティング

最新医療機器より大切なものは、患者さんを想う心――。著者のところには、がん、糖尿病、嚥下困難、胃ろう、認知症、独居うつ、褥瘡など、様々な病気をもつ高齢の患者さんがやってくる。地域の高齢な患者さんの声に真摯に耳を…

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