先物取引では「損益が発生しない」状況を作り出し、価格変動による損失を回避することが可能です。日本のお米農家では、商品先物取引で価格を固定させ、お米の価格変動リスクをヘッジする方法が広く知られています。この「価格変動リスクのヘッジ機能」のさらなる利点について、三次理加氏の『お米の先物市場活用法』(時事通信出版局)より一部編集・抜粋し、解説します。

お米の先物市場に「投資家」が必要不可欠なワケ

■透明で公正な価格の形成・発信機能

 

商品先物市場には、これまでに紹介した「価格変動リスクのヘッジ機能」「資産運用機能」のほかに、「透明で公正な価格の形成・発信機能」という重要な役割があります。モノの価格は、原則として、売り手と買い手のバランスによって決まります。

 

ところが、たとえば売り手が一部の大手業者に限定された場合、売り手の都合によってのみ価格が決定されることがあり得ます。

 

取引所における価格は、ヘッジを目的とした生産者や需要家(=ヘッジャー)、現物の受渡しを目的とする投資家や企業、リスクを取って利益を追求する投資家(=スペキュレーター)など、さまざまな思惑を持った多くの売り手と買い手の存在によって決まります。

 

また、取引は明確なルールに基づいて行われ、誰かが市場を独占、支配することのないよう取引所が監視を行います。そのため、取引所で決定される価格は「透明度の高い、公正な価格である」といえるでしょう。

 

このように多数の売り手と買い手の存在によって取引所で成立した価格は、ただちに内外に発表され、生産者が値決めを行う際や需要家・事業者が米を購入する際に、価格指標として参考にすることができます。

 

たとえば、米は、播種(はしゅ)*5時には収穫時の価格がわかりません。もし、米先物市場がなければ、農家などの生産者自身が将来の価格や収穫量を予想して、価格変動リスクを覚悟のうえで、注文する種の数量を決めなければなりません。

 

しかし、米先物市場があれば、その時点における1年先までの価格がわかります。そのため、それを参考に計画を立てることができるのです。もちろん、その時点で売りヘッジを行い、販売価格を固定することもできます。

 

「投資が目的で米市場に参入する人がいると、米価格が乱高下するじゃないか! 取引所における取引は、生産者や需要家だけに限定するべきだ」

 

そのように思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、生産者や需要家などのヘッジャーは、市場で取引を行うタイミングや戦略が似通ったものになる傾向があります。

 

一方、投資家の思惑は人それぞれであり、運用戦略も人により異なります。また、投資家はヘッジ目的の買いと売りの量の不均衡を引き受ける存在でもあります。つまり、投資家の存在が市場に流動性を与え、流動性があることにより、ヘッジャーが円滑にヘッジを行うことができるのです。

 

投資家は、市場における緩衝材的な役割を果たしており、必要不可欠な存在なのです。

*5種をまくこと。

 

 

三次 理加

ファイナンシャルプランナー

 

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お米の先物市場活用法

お米の先物市場活用法

三次 理加

株式会社時事通信出版局

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