競売不動産とはそもそも何か?
不動産競売手続は弁済を受けられずに困った債権者が裁判所に申立てをすることにより始まる。債権者が債務者の所有する、または担保として提供していた不動産を裁判所に換金してくれるよう頼むのである。裁判所は申立内容に間違いがなければ、その不動産を差し押さえたうえ、強制的に売って、その代金を債権者への支払いに充てる。不動産競売とは大ざっぱにこのような制度であるといえる(ただし、競売不動産の中には、担保に基づき行われるもの以外のものもある)。
一般に競売不動産の情報が公開される方法は裁判所での掲示の他、新聞での広告などでの競売物件一覧掲載などがある。また、インターネット上では、全国の地方裁判所の競売不動産の売却スケジュールやその物件資料が公開されている。
一般の購入希望者はなかなか裁判所へ足を運びづらいことから考えれば、裁判所のインターネットサービスなどからまずは情報をとることになる。そして、入札を検討したい不動産を絞ったら裁判所に備置されている対象不動産の資料を確認することになる。そして、入札を検討したい不動産を絞ったら裁判所に備置されている対象不動産の資料を確認することになる。
ところで現在競売申立てから一般に競売不動産が公表されるまでは、東京地裁では約6~10ヶ月間前後である。かつて事件処理が2年以上かかっていたことを考えると、裁判所の処理スピードは格段に上がり、結果として未処理事件が顕著に減少していった。
下記の図表は全国および東京地域の不動産競売物件新規申立件数の推移である。1997年に全国で78,000件以上に上ったのをピークとして、その後減少を続けてきたが、その後2008年のリーマンショックによって金融危機が発生したことにより再び新規申立件数が2008年には67,000件強に増加した。しかし、2010年には逆に、51,000件強と急激に減少し、その後も減少を続けている。
【図表 全国および東京地域の不動産競売物件新規申立件数の推移】
裁判所に代金を納めても引渡しは保証されない
私たちが、土地や家を買おうとするとき、広告を見たり、不動産会社に依頼したりする。より安く、そしてより良いものを求め努力するのである。もし、読者が少しでも競売不動産というものに興味を持ったなら、ひょっとすると、その望みを叶える早道となるかもしれない。
競売不動産は、一般的にその特殊性から市場価格より安く裁判所から売り出されている。業者が一時的に引き取ったうえ、特殊な権利関係を整理し、相当な転売益を乗せて一般ユーザーに販売することが想定されているからである。もし、競売不動産を直接裁判所から買えたなら、問屋を通さず購入できるのと等しい。より有利な不動産購入を考えるなら、この方法を選択肢の一つに入れてよいのではなかろうか。
しかし、安いには安いだけの理由がある。そこで、競売不動産の入手にあたっては、その理由、つまりは、その特徴ともいうべき点を正しく把握せねばなるまい。これについて、次に、その概略を記すこととしたい。
私たちが、通常不動産を購入するときは代金を支払うのと引換えに売主に登記の移転(名義変更)と引渡しを行ってもらう。しかし、競売不動産の場合裁判所にその代金を納めても、登記の移転は行ってもらえるものの引渡しは保証されない。買い受けた者が、その不動産を利用または保管している人から自分で引渡しを受けなければならない。基本的には裁判所は面倒を見てくれないのである。
一般的な不動産取引からすれば不十分とも思える。しかし、このことがまさに競売不動産の最大の特徴といえるのである。お金を払っても利用できないのでは何にもならない。しかも厄介なことに競売不動産各々により引渡しの受けやすいもの、ちょっと手間取るもの、そして大いに苦労が予想されるものとバラバラなも利用でのである。競売不動産はその購入にあたり立地条件や、建築制限など、通常の不動産において注意すべきことは、もちろんチェックすべきだ。
「引渡し」に掛かる費用・時間を必ず考慮して購入
しかし、何より関心を払わなければいけないことはこの「引渡し」なのだ。購入に先立ち引渡しを受けるにあたっての、その方法や費用、そして時間などを予想しなくてはならない。購入するか否か、購入するとしたならいくらですべきか、これらの決定を左右する最大の要素ともいえるのだ。
これまで不動産競売が素人にとって恐いものだととらえられがちだったのもこの点である。たしかに今は少なくなったがプロの占有屋と呼ばれる人もおり、こういう人たちは、買受人から法外な立退料をとるのを仕事(?)にしている。
しかし、事前の調査により、こういったものを避ける、ないしは対策を練っておくことは可能なことなのだ。ただし、いくら事前に調べたところで漏れがないとはいいきれない。競売不動産を必要以上に恐れるべきではないが、購入にあたっては占有状況についての十分な調査とともに、資金および時間的余裕を持つことが肝心だろう。間違っても、高金利の融資金などで購入したうえで転売しようなどとは思わぬことだ。