事例②:「毎年110万円贈与」に潜む税金リスク
Cさんは、地元の信用金庫をメインバンクとしていたため、贈与時の振込の手間などを考え、受贈者である子や孫の口座も同じ信用金庫で作成。しかし、コンビニのATMなどで引き出せるとはいっても、遠く離れた子や孫にとって不便な口座であることには変わりません。そのため、当面必要なお金でなかったこともあって、通帳や銀行印はCさんが保管・管理していました。
Cさんが亡くなったあと、お子さんと2人のお孫さんは、それぞれ遺品のなかから自分名義の通帳・銀行印を受け取りましたが、贈与契約書もあったことから、相続対象には含めませんでした。
【事例の概要】
■地方在住の父が、贈与税の非課税枠(110万円)限度内で、離れて暮らす推定相続人や孫らに対して、各推定相続人や孫名義の口座へ贈与をしていた
■贈与する際は、必ず贈与契約書を締結。
■贈与先口座は、父が住んでいる近くにある金融機関で作成し、通帳、銀行印は父が保管管理をしていた。
■子どもや孫たちはお金が必要なときに父に送金をお願いしていた。
【税務調査が入った場合】
名義預金を指摘される可能性が高いです。通常、財産は所有者が自身で管理するものとされています。仮に、口座名義が自分のものであっても、今回のように親が通帳や銀行印を管理するなど、そのお金を実際に管理支配していたのであれば、それは親の相続財産であると判断されてしまいます。
【資産防衛術としてのアドバイス】
■贈与した財産の管理は受贈者に任せる!
親から見ると、いくつになっても子や孫のことは心配になり、つい自分で管理しようとしてしまいます。無駄遣いが心配だからといって、贈与者自らが受贈者の銀行口座を開設したり、通帳・キャッシュカードを自分で管理して簡単に使わせないようにしたりすることもあるのではないでしょうか。
心配な気持ちは分かりますが、相続税対策を考えた場合、一度贈与した財産に制限をかけてはいけません。
■税務調査の事実認定場面では、口座の管理支配者が重要!
口座の管理支配といっても、立証できるものは限られています。わかりやすいものは、通帳やキャッシュカード、銀行印です。これらは、受贈者がきちんと支配管理しましょう。
■口座開設は、受贈者が行いましょう!
口座の支配管理者が誰かということに焦点が当たる場合に、十分な証跡が出揃わないケースもあります。そんな場合、調査対象として口座開設届の筆跡鑑定をすることもあり得ます。