経営者として1000万円超の役員報酬を得るようになると、今度は高額な税負担や社会保険料負担がのしかかります。これらを削減する方法はあるのでしょうか。本記事では、知る人ぞ知るスキーム、課税されない組織(ビジネスのための箱)を作って利益を参加者で自由に分配できる「LLP(有限責任事業組合)」の活用を紹介します。AXESS総合会計事務所の代表税理士・阪口雅則氏が解説します。
個人事業主の事業収入は、社会保険の対象外
そのような厳しい状況にある経営者にとって、LLPは社会保険料負担の新たな選択肢となるかもしれません。
LLPを事業の中心に置くことで、個人収入を「役員報酬の受給」と「事業所得」の2つに分岐させることが可能となります。
図にすると、以下のようになります。
ここでキモとなるのが「個人事業主の事業収入は社会保険(健保、厚生年金)の対象にならない」ということです。
協会けんぽ(東京)の場合、2021年5月現在の保険料率に基づくと、次のような社会保険料が生じています。
●標準月額報酬(基本的に月額役員報酬+通勤費の合計)
上限 1,390,000円
●健康保険料(介護保険含む場合)
法人個人合計負担:161,796円(合計11.64%)
個人側: 80,898円(折半により5.82%)
●標準月額報酬(基本的に月額役員報酬+通勤費の合計)
上限 650,000円
●厚生年金保険料
法人個人合計負担:118,950円(合計18.30%)
個人側:59,475円(折半により9.15%)
年間の役員報酬1600万円前後以上の経営者の場合、社会保険料負担は上限金額となりますので、法人と個人合わせて、
161,796円 + 118,950円 = 280,749 円/月 (年額336万円)
が、1人分の保険料となります。
しかし、もしLLPで所得分散を図って役員報酬を月10万円にすれば、年間の役員報酬は120万円となります。社会保険料負担を、通勤交通費を加味したうえで月11万円だと仮定すると、法人と個人合わせて、
12,804円 + 20,130円 = 32,934 円/月 (年額39万円)
が、1人分の保険料となります。その結果、約300万円の保険料が削減されることとなります。
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Apex Group Japan税理士法人
代表税理士
同志社大学工学部卒業後、アーサーアンダーセン東京オフィス入社。
1995年インターネットベンチャーを起業し、経営者としてビジネスの経験を積む。2002年より現会計事務所を主宰。2023年にAPEX GROUPのメンバーファームとして、Apex Group Japan税理士法人 に改組。
関与先は、ベンチャー企業や外資系企業が多く、外資系企業に対しては英語、中国語によるバイリンガルサービスを提供。その他、コンソーシアム方式の技術研究開発に活用される技術研究組合(CIP)に対する税務会計サービスでは、国内随一のシェアを誇る。また昨今外資系不動産SPC・ファンド向けの税務サービスにも注力している。
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