国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者が亡くなったとき、その人によって生計を維持されていた遺族が受けることができる「遺族年金」。遺された人たちにとって命綱ともいえるでしょう。今回は遺族年金の基本的な仕組みとともに、死亡後の遺族年金の扱いや必要な手続きについてチェックしていきます。

「遺族年金」の仕組みをおさらい

配偶者が死亡すると、その妻や夫は遺族年金を受け取れます。ただし受け取れる条件は異なるため、まずはどのような仕組みなのかを見ていきましょう。受給者の死亡後に必要な手続きについて理解しやすくなります。

 

■遺族年金の種類と受給対象者

国民年金や厚生年金保険に加入している被保険者が死亡し、要件を満たしている場合には、死亡した被保険者によって生計を維持されていた遺族は、遺族年金を受給できます。代表的なのは「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」です。

 

遺族基礎年金の対象は、子のある配偶者か子です。子は下記のいずれかに当てはまる者のことをいいます。

 

・18歳になった年の3月31日に到達していない子

・20歳未満で障害年金の障害等級が1級か2級の子

 

一方、遺族厚生年金は、子のいない30歳未満の妻でも5年間は受給できます。また遺族基礎年金の受給要件に当てはまる妻と子は、同時に遺族厚生年金も受給が可能です。加えて夫・父母・祖父母も55歳以上なら対象となります。

 

■夫が死亡して妻が受け取る場合

被保険者である夫が死亡したとき、子どもが18歳の年度末までは妻が遺族基礎年金と遺族厚生年金を受け取れます。その後65歳までは、遺族厚生年金と中高齢寡婦加算の対象です。

 

65歳以降は妻自身の老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給するため、遺族厚生年金の受給は終了します。ただし夫の遺族厚生年金額のほうが妻の老齢厚生年金額より大きい場合、その差額を受け取れる可能性があります。

 

■妻が死亡して夫が受け取る場合

遺族基礎年金の対象者は、以前は子どもを持つ妻と子どもと定められていました。そのため妻を亡くした夫は受給できない仕組みだったのです。しかし現在では子どもを持つ配偶者が対象とされているため、夫も受給できるようになりました。

 

ただしそのためには、妻が保険料を未納なく支払っていることや、子どもがいることといった条件を満たしていなければなりません。また遺族厚生年金は、子どもに受給権があります。

 

夫が遺族厚生年金を受け取るには、妻の死亡時に夫の年齢が55歳以上であることが条件です。ただしすぐに受け取れるわけではなく、受給開始は60歳からと決められています。

遺族年金を受給中の親が死亡したらどうなる?

※画像はイメージです/PIXTA
※画像はイメージです/PIXTA

 

遺族年金を受給中の親が死亡した際には、受給権はどのように扱われるのでしょうか? 子どもの受給権の扱いや、請求により受け取れる一時金について紹介します。

 

■受給権のある子が受給できるようになる

子どもの遺族年金受給権は、親が支給されている間は停止状態です。その間、子どもが遺族年金を受け取ることはありません。停止されていた受給権は、親の死亡とともに復活します。

 

そのため死亡した親に代わり、子どもが遺族年金を利用できるのです。子どもが受給を開始するには「遺族年金受給権者支給停止事由消滅届」を作成し手続きしなければなりません。

 

■遺族年金生活者支援給付金も同様

遺族基礎年金の受給者を対象に支給されている「遺族年金生活者支援給付金」も、遺族年金と同様、親が死亡すると子どもが受給できます。前年の所得が462万1,000円以下の場合に、月額5,030円が支給される仕組みです。

 

ただし2人以上の子どもが遺族基礎年金を受給している場合には、5,030円を人数で割った金額が支給されます。加えて、親に未支給の年金生活者支援給付金がある場合には、その請求も可能です。

 

■企業年金の遺族年金を受け取っていた場合

受け取っていた遺族年金が企業年金なら、支給は受給者が死亡した時点で打ち切りです。ただし年金原資の残高見合いから「一時金」の形で遺族へ支払われることもあります。

 

また受給していた親が死亡した場合、遺族は死亡届を提出しなければいけません。手続きが遅れると遺族年金の過払いが発生する可能性があるからです。受け取り過ぎた年金は返還しなければいけないため、注意しましょう。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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