毎月分配型は「自分の資産」を取り崩して分配金を出す
──「米国リート」が目立ちますが……リートって何ですか?
リートは不動産投資信託のことです。簡単に言うと、投資信託の投資先がこれまで見てきたような株式ではなく、オフィスビルなどの不動産になります。賃料収入や不動産の値上がり益が投資家に分配される投資信託です。
──アメリカの不動産が今の売れ筋(書籍刊行2019年時点)ということですね。
はい、2018年の半ば頃まではアメリカの株式市場が絶好調でしたが、トランプ元大統領が中国との貿易政策で強硬姿勢をとったせいで、株式市場は2018年10月以降、不安定な動きを繰り返していました。
そんな中で不動産は米中貿易戦争の影響を受けにくいということや米国金利の低下見通しで人気になっているのです。このように推奨商品が短期的な市場予測に基づいて決まるから、マーケットの人気が移るのに合わせて、売れ筋の商品がひんぱんに変わっていくことになります。
──私もそうですけど、日本人はブームに流されやすいですよね。それから、ファンド名のところで「毎月分配」というのが目立ちますが、これは何ですか?
やはり気がつかれましたね。実は、これが日本の投資信託を特徴づける最大のポイントです。ここはかなりツッコミどころ満載なので語りたいことが尽きないのですが、あまり深入りすると論点がズレてしまいます。
簡単に言いましょう。「毎月分配型」は、金融機関側がお金を持っているシニア層に投資信託を買ってもらうための一つの工夫です。いや、私は「猫だまし」と言っています。
──猫だまし、ですか?
毎月分配型とは、毎月お小遣いのように「分配金」がもらえるタイプの投資信託のことです。預金よりも高い利息収入が得られると喜ばれていますが、問題はそれが投資による利益とは限らないこと。必ずしも毎月利益が出るとは限らないので、時には利益でなく自分の資産が取り崩されて「分配金」に回っていることも少なくないのです。
──毎月お小遣いがもらえて得したような気分になるけど、実は自分の資産から取り崩していることもある……みたいな感じですよね。
そうですね。この数年来は金融庁の指導もあって、消費者の間でも分配金に対する認識もかなり改まり、過度の分配金引き上げ競争は収まっていたはずですが、今この表を見て自分でも驚いた次第です。未だに売れ筋ベスト10のうち8本が毎月分配型とは……。先祖返りしてたんですね……。私は決してすすめません。
上地 明徳
信州大学経営大学院 特任教授
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