「背景を説明するひと言」が「伝わる文章」を作る
より伝わりやすい文章にするには、「伝えたいことの背景」にも丁寧に触れることだ。
文章は一文一文悩みながら書くものではない。とくに何かをおすすめしたいときは、気のおもむくままに書いたほうが読む人の心にストレートに届く文章になる。そのためには、まず一気に書き上げること。
ただし勢いに任せて書いていると、つい「自分が伝えたいこと」にばかり意識が向きがちだ。その過程で、つい「伝えたいことの背景」に関しては説明がおざなりになってしまうのである。
長々と説明する必要はない。ただ「誰もが知っていることだろうが、念のため」というくらいの意識でひと言補足する。それだけでも、読んでいる人との間に共通認識を生み出し、「何を言いたいのか」も格段に伝わりやすくなるのである。
「いま、コロナの影響で…」のひと言が購入を促す
実際の添削例として、まずは次の投稿をご覧いただきたい(図表1)。
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<推敲前>
北海道ではいま物産展が中止になり、商品が余ってとても大変とのこと。
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ぜひぜひ皆さまご高覧、拡散のお力添えをお願いします。
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上記の投稿は、「新型コロナウイルスの影響で、各地で北海道物産展が中止に追い込まれていること」が背景となっている。ならば、その背景にはきちんと触れたほうがいい。
この投稿はいきなり「北海道ではいま物産展が中止になり」と始まっているが、私は少し唐突すぎる印象を抱いた。
投稿されたのは2020年5月20日である。この時日本は緊急事態宣言下だったので、ここに書かれている「いま」は「新型コロナウイルスの感染拡大が世間で恐れられているいま」であることはわかる。この一文だけでも、当時読んだ人は何が背景になっているのかをくみ取り、投稿者の意図も察することができるだろう。
しかし、たとえ一瞬でも、読んでいる人に「くみ取る」「察する」といった労力をかけるのは得策ではない。たとえ、「そんなことは言われなくてもわかってる」と言われそうであったとしても背景を伝えるひと言を添えたほうがいいのだ。
「新型コロナウイルスの影響で、各地で開催されるはずだった北海道物産展が中止になり、北海道ではいま、商品が余ってとても大変とのこと」
たとえばこのようにすることで、読んでいる人は「ああ、新型コロナにはそんな影響もあるのだな」と認識したうえで先を読むことになる。つまり、より読者の行動(購入)をうながしやすくなるのだ。
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<推敲後>
新型コロナウイルスの影響で、各地で開催されるはずだった北海道物産展が中止になり、北海道ではいま、商品が余ってとても大変とのこと。
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ぜひぜひ皆さまご高覧、拡散のお力添えをお願いします。
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<POINT>
●「伝えたいことの背景」に触れると、伝わりやすい文章が書ける。
●書き手と読み手の認識が同じになる文章を書くことが重要。
●あえて、「言わずもがな」の一文を書き加える。
成毛 眞
書評サイト「HONZ」 代表
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