ブログやTwitter、Facebook…時間や場面を問わず、誰でも簡単に情報発信が可能となった今、「1憶総書き手時代」が到来したといっても過言ではない。SNSは個人だけでなく企業にとっても強力なアピールの場だ。しかし実際に「多くの人に読まれ、拡散されていく」文章、すなわち「バズる」文章を書くにはどうすればよいのか? 書評サイト「HONZ」を主催する筆者が解説する。※本連載は、成毛眞氏の著書『バズる書き方』(SBクリエイティブ)より一部を抜粋、再編集したものです。

よく使う言葉・文章構成…推敲で正すべき「書きグセ」

誰にでも文章のクセがある。それが自分の文章特有の味わいにつながることもあるのだが、意味もなくクセが顔を出すのは鼻につく。よく使う言葉、よく使う文章構成があることで、どこかワンパターンで面白みの少ない文章にもなりかねない。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

そういう意味でも、やはり推敲という作業は重要である。とかく最初に書き上げる文章には自分のクセが現れやすい。書き上げたあとに読み直し、客観的な視点から自分のクセを正すというのも推敲の一部なのだ。

 

たとえば投稿①を見てほしい(図表1、2)。私は自分の文章のクセを正している。「それ以上に」→「そのために」という修正だ。

 

[図表1]投稿①推敲前

 

[図表2]投稿①推敲後

 

私には、「AはBだ」と述べたあとに、「それ以上にCなのだ」と書きたがる傾向がある。いわば「対比による強調効果」だ。

 

図表1の投稿でも「文章職人としての才能がもっとも重要」と強調する意図で「それ以上に」と書いた。しかし前段落を受けて当該箇所を読んでみると、「そのために」のほうがふさわしいと思った。

 

前段落では「どうしたら人が読みたがる文章を書けるかというと、何回も修正を重ねる職人であること」と述べている。そして当該の段落では「文章職人としての才能の重要性」に触れている。

 

つまりここでは、前段落との対比で何かを強調しているのではない。この2つの段落を通じて「何回も修正を重ねる職人であるためには、文章職人としての才能が欠かせない」という話になっているのだから、「そのためには」とつないだほうが適切だ。自分の文章のクセによって、文脈に少し歪ゆがみが生じてしまっていたわけである。

 

まさにこの投稿でも書いているように、私は文章を書くときに起承転結など逐一考えることはしない。だから、このように文脈に合わないところで文章のクセが飛び出すこともあるのだ。

言葉の重複は稚拙な印象を与える原因

修正前の文章も修正後の文章も公開しているから、「それ以上に」のバージョンを読んだ人も多いはずだ。しかし、おそらく「ここで『それ以上に』というのはおかしい」なんて思った人はいないだろうと思う。

 

それでも修正したのは、何より自分自身が読んで気持ち悪さを感じたからである。同じ言葉を続けて使った場合も同様だ(図表2)。

 

推敲後は図表3⇒
[図表2]投稿②の推敲前 推敲後は図表3⇒

 

図表2の例を見てみなさんも感じたと思うが、文法的な誤りではなくても、同じ言葉が続くと気持ち悪い。

 

いい文章を読み慣れている良質な読者には、拙い印象を与えてしまうだろう。推敲は、それを直すチャンスでもあるのだ。同じ言葉が続いたら、片方を削るか書き換える。私自身もそうしている(図表3)。

 

[図表3]投稿②の推敲後

 

図表2の例では、「当時」が連続している。あとの「当時」を削ることにしたが、そうすると意味が通じにくくなってしまう。「当時」というのは、つまり「私がマイクロソフトにいたころ」という意味だ。だから「マイクロソフト社内では」と書き換えることで、「当時は」という意味合いを持たせたのである。

 

誰も気づかないであろう細部でも、自分だけは見落とさずマメに直す。そういう細かさも書き手には必要だ。しょせんはスクロールされ流れていくだけのSNS投稿といっても、やはり真剣に取り組むべきなのである。

 

<ポイント>

●無自覚に使っている「書きグセ」には要注意。

●間違いではなくても、同じ言葉の連続は避ける。

●誰も気づかないような細部に、書き手の誠意があらわれる。

 

 

成毛 眞

書評サイト「HONZ」 代表

 

 

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