誤解を解こうにも骨折り損…クソリプを送る人の心理
読者が増えるのは喜ばしいことだが。しかし、その反面、1つ問題が生じることもある。それは、世の中にはいろいろな受け取り方をする人がいるということだ。自分の真意とは違うように受け取られ、誹謗(ひぼう)中傷じみたコメント、いわゆる「クソリプ」を送られる可能性もゼロではない。
そんなのは読解力に乏しいほうが悪いんだと思うかもしれないが、ひとたびこちらがまったく意図していないゆがんだ受け取り方をされると厄介だ。
まず、「どうしてこんな受け取り方をするんだろう」と自分が嫌な気分になる。次に、誤解を解くために相手にコメントを返す時間を割かなくてはいけなくなる。それも読解力に乏しい輩(やから)のために、わざわざ、である。考えただけでも気が滅入るだろう。
そしてさらに厄介なことに、いくら丁寧に言葉を尽くして誤解を解こうとしても、そもそも人の意図を取り違えてコメントまで書いてくる人は、そう簡単に納得してくれない。
そういう人は、人の言葉尻をとらえて揶揄(やゆ)することで悦に入り「言ってやった!」となっている場合が多い。だから、なかなか「なるほどそういう意味だったんですね、失礼しました」とはならないのである。
結果として自分だけが、「なんか変な人に絡まれた」と後味の悪い思いをすることになる。これでは徒労もいいところではないか。
最善のクソリプ防止策は、誤解されない文章を書くこと
自分の発信をきっかけとして、コメント欄などで有意義な議論が交わされるのは歓迎すべきことである。しかし単なる揚げ足取りを仕掛けてくるような相手に費やす時間はない。
それに自分が不用意な書き方をしたばかりに、読解力に乏しい人に絡まれるだけでなく、まともな読者から誤解されるということも起こりうる。
大多数の慎み深い読者は、あまりコメントなどしない。ただ、あなたのことを「この人はものがわかっていないな」「こんな考え方はありえない」と誤解し、そっとフォローを外すだけである。これは避けたい。
自分の発信がどう受け取られるか。その責任の9割は読者ではなく、自分にあると考えるべきである。
不用意な書き方はしない。誤解を生む芽はあらかじめ摘んでおく。だから推敲が大事なのだ。具体的にいえば、いろいろな受け取り方がありうる書き方にならないように気をつける。突っ込まれるスキをつくらない。これらは、いくら心がけても心がけすぎることはない。
「誰に読まれても誤解されにくい文章」へ…推敲の実例
図表1、2は、ある日の私の投稿である。
投稿後に細々(こまごま)と修正を加えているのだが(図表2)、ここで例示したいのは次の3点だ。
1つめは、「…QRコード決済ダメじゃね」⇒「QRコード決済ダメじゃね。バーカ」という修正だ。
「ダメじゃね」というのは、「ダメだよね」と同意を求めるニュアンスの一文である。だが「ダメじゃね」だけだと、おそらく50代以上の読者は語尾を下げて読むだろうと思った。そこで「バーカ」を入れることで、「ダメじゃね」の同意のニュアンスを際立たせた。
2つめは「哺乳類が恐竜類を知性で凌駕(りょうが)するという確証はない」⇒「哺乳類が恐竜類を知性で凌駕するという生物学的な優位性はない」という修正だ。
「確証はない」というと、あたかも私個人の見方であるかのように受け取られる可能性があると思った。そうなると、「あなたは確証がないと思っているかもしれないが、哺乳類が恐竜類を知性で凌駕するかもしれないじゃないか?」と思う人がいるかもしれない。
これは、あくまでも生物学のなかでの一般論として述べていることだから、その真意が伝わるように「生物学的な優位性はない」とした。
そして3つめは、「ネズミがカラスに敵うわけもない」⇒「ネズミがカラスに知性で敵うわけもない」という修正だ。
この一文がある段落を見てもらえればわかるように、ここでは動物の「知性」について書いている。くだんの「ネズミがカラスに敵うわけもない」というのも、この文脈で読めば知性のことを言っているのだと伝わるはずだ。
しかし、先ほども述べたように世の中にはいろいろな読み取り方をする人がいる。「ネズミがカラスに敵うわけがないだと? いや、ネズミのほうがカラスより力が強いかもしれないぞ!」などと、誰かがつまらないコメントをつけてこない保証はない。
だから念のため「知性」という言葉を足し、「ネズミがカラスに知性で敵うわけもない」とした。つまらないコメントに「そういう意味ではない。知性の話をしている」なんて返す時間を費やさなくていいよう、予防線を張ったわけだ。
例文でもおわかりいただけたと思うが、推敲とは、かくも細かい作業なのである。最初は少し神経を使って文章を見直す必要があるが、慣れてくれば目を皿にして読み直さなくても、「あ、この書き方はちょっとまずいな」という箇所が自然に目につくようになるだろう。
「誰に読まれても誤解されにくい」というのは、質の高い発信の一条件なのだ。
<ポイント>
●発信が周囲にどのように受け取られるか、責任の9割は書き手にある。
●多様な受け取られ方がされる表現は、事前に書き換えておく。
●誰に読まれても絶対に誤解されない発信=質の高い発信。
成毛 眞
書評サイト「HONZ」 代表
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