不動産の告知事項と聞けば、孤独死や殺人事件をイメージしがちですが、じつはそういったケースばかりではありません。告知事項とは、不動産業者が買主・賃借人に必ず伝えなければならないとされている事柄を指します。今回は、「告知事項あり」との記載が義務付けられている「物理的瑕疵」「法的瑕疵」「環境的瑕疵」「心理的瑕疵」という4つのパターンについて解説します。

「告知事項あり=事件があった不動産」とは限らない

 

不動産広告の片隅に「告知事項あり」と記載された物件を見つけることがあります。こういった物件は売買・賃貸ともに周辺相場より価格・家賃が安く設定されているので「おや?」と気づく人は多いかも知れません。しかし、その告知すべき内容の詳細がまったく記載されていないと「自殺や孤独死があった部屋では?」と訝ってしまいます。

 

しかし、一概にそのような物件ばかりであるとはいえません。

 

告知事項とは、不動産業者が買主・賃借人に必ず伝えなければならない事柄です。その事項とは、建物の不具合や周辺環境からくる悪影響、すなわち物件に関わる「瑕疵(かし)」のことで、「物理的瑕疵」「法的瑕疵」「環境的瑕疵」「心理的瑕疵」の4つの瑕疵に分類できます。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

物理的瑕疵:雨漏り、亀裂、耐震強度不足、土壌汚染…

 

天井からの雨漏りや水回りの漏水、壁や床の亀裂などが一般的ですが、木造建物のシロアリの被害やマンションの耐震強度不足、土地の土壌汚染や地中障害物の有無なども当てはまります。内見時の室内はきれいにリフォームされているため瑕疵の発見は困難ですし、土壌汚染や地中障害物についても建物竣工後は確認ができません。

 

とくに用途地域が工業系(準工業地域など)の場合は土壌汚染に注意が必要です。売主も知り得ない過去に、そこで有害物質を使用する工場が稼働していた可能性も考えられます。各種工場・作業所の稼働履歴は行政機関で確認できるので、不動産業者に調査を依頼するといいでしょう。

法的瑕疵:行政ルールに抵触している違法物件

 

一見して違法性は感じられない建物でも、行政ルールに反している場合があります。建造物に関わる法律として「建築基準法」「消防法」「都市計画法」がありますが、それらに抵触するのが違法瑕疵物件です。

 

容積率や建蔽率が法定基準を超えている場合は建築基準法に、マンションやオフィスビルなどの共同建物で防火扉や避難ハシゴが取り付けられていない場合は消防法にそれぞれ抵触します。また、行政機関の建築確認審査が緩かった時代の用途地域指定外建物や無道路地建物なども未だ現存しています。これらは都市計画法に抵触するものの、取り壊しは強要されません。そういった不動産の広告には「告知事項あり」ではなく「再建築不可」と記載されるケースが多いようです。

環境的瑕疵:不快な騒音や異臭を発する施設が近い物件

 

鉄道や高速道路、工場やゴミ焼却場など、人が不快と感じる騒音や異臭を発する施設が近隣にある場合は告知事項に当たります。その他、危険物取扱施設であるガソリンスタンドも環境的瑕疵に該当します。

 

これらの施設がすべての人に身体的悪影響を及ぼすかどうかは分かりません。「物件価格が安ければ周辺環境は気にしない」という投資家にとっては意味のない告知事項かも知れません。

 

 

次ページ心理的瑕疵:自殺や殺人等があった、いわゆる…

※本記事は、「ライフプランnavi」に掲載されたコラムを転載・再編集したものです。

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