夫の母をせっせと介護でも…「相続税は2割増し」の特別寄与分

民法には「寄与分」という、被相続人の資産形成に貢献したり、看護に手を尽くしたりした相続人に対し、相続時に寄与分を上乗せする制度がありました。しかし、2019年7月1日以降の相続から、法定相続人以外の親族に「特別寄与分」という制度が適用されるようになり、法定相続人でない、たとえば被相続人の子の配偶者等にも配慮されるようになりました。詳しく見ていきましょう。

受け取った「特別寄与分」には2割増しの相続税が…

被相続人を療養看護したような親族(相続人を除く)が受け取れる「特別寄与分」には、2割増しで相続税がかかります。

 

●相続人以外の親族が請求できるのが「特別寄与分」

 

従来、民法では、「寄与分」という制度があります。これは、被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付を行ったり、被相続人の療養看護その他の方法によって、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした相続人には、その寄与分を相続分に加えるというものです。

 

具体的には、次の5つの類型があるとされます。

 

事業従事型…被相続人が行う事業を手伝った、など

財産出資型…被相続人の借金の肩代わりをした、など

療養看護型…被相続人を介護した、など

扶養型…被相続人の生活の援助をした、など

財産管理型…被相続人が保有する資産の売却を手伝った、など

 

「寄与分」が認められるのは相続人に限定されています。しかし、被相続人の事業を助けたり、生活の面倒を見ているのは相続人とは限りません。例えば、被相続人の子の妻が被相続人の介護を行ったりしていることもありますが、寄与分の請求はできません。

 

そこで民法改正により、2019年(令和元年)7月1日以降の相続から「特別寄与分」という制度が適用されるようになりました。

 

相続人でなくても親族であれば、「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与」をした場合には、特別の寄与に応じた金銭(特別寄与料)の請求が認められることになったのです。

 

なお、特別寄与分には、次のような要件があります。

 

(1)被相続人の親族であること

特別寄与料を請求できるのは、相続人以外の親族。相続人には寄与分が認められているため、特別寄与の請求権者(特別寄与者)とはされない。相続放棄した者、相続欠格者、廃除により相続権を失った者も対象外。

 

(2)療養看護その他の労務を提供したこと

被相続人に対して、「療養看護その他の労務を提供」したことが必要。寄与行為の種類は療養看護などの「労務の提供」とされていて、被相続人に対する財産給付は除かれる。相続人の寄与分のような財産出資型(不動産購入資金の援助のように被相続人に財産上の利益を与えるものなど)の貢献をした者は、特別寄与者にはあたらない。

 

(3)無償であること

被相続人に対する労務の提供が「無償で」なされたものでなければならない。被相続人から対価や報酬を受け取って労務を提供していた場合は対象外。ただし、被相続人から何らかの財産給付を受けていた場合であっても、その財産給付が労務の提供の対価とはいえない場合には、無償性は否定されない。

 

(4)労務の提供によって被相続人の財産が維持または増加していること

この要件は、「寄与分」でも必要とされている。財産上の効果のない援助・協力だけにとどまる場合は、特別寄与としては評価されにくい。

 

(5)特別の寄与

相続人が「寄与分」を請求する場合、被相続人と相続人との身分関係によって通常期待されるような貢献では寄与分を認めるには足りないという意味で「特別の寄与」が必要だとされる。しかし、特別寄与者は相続人ではないのでこれと同じように考える必要はなく、特別寄与制度での「特別の寄与」とは、一定程度以上の寄与、つまりその者の貢献に報いるのが適当だといえる程度に顕著な貢献があることを意味するとされる。
 

●「特別寄与分」は被相続人からの「遺贈」と同じ扱い

 

特別寄与料は、遺産分割手続きとは別のものとされており、該当する親族は相続人に対して、寄与に応じた額の特別寄与料の支払を請求することになります。

 

特別寄与料の請求が認められるか、認められるとした場合その額はいくらかなどは、特別寄与者と相続人との協議によって決まります。協議が整わないときや協議ができないときは、家庭裁判所に特別の寄与に関する処分の調停や審判を申し立てることができます。

 

ただし、特別寄与者が相続の開始および相続人を知ったときから6カ月を経過したとき、または相続開始のときから1年を経過してしまうと、申し立てができなくなってしまいます。

 

相続人から特別寄与料の支払を受けた人は、被相続人から「遺贈」により特別寄与料を取得したものとみなされます。「遺贈」とは、遺言によって、遺贈者(遺産を贈る側)の財産の全部または一部を、受遺者(遺産を受ける側)に無償で贈与することです。遺贈により被相続人の財産を取得した人は、法定相続人でなくても相続税の納税義務者となります。つまり、特別寄与者も特別寄与料を受け取った分について、相続税がかかります。

 

注意が必要なのは、特別寄与者は法定相続人でないため、「相続税の2割加算」の対象になることです。「相続税の2割加算」とは、被相続人の配偶者および1親等の血族(親と子)以外の人が相続した場合、相続税の総額を各相続人が取得した相続財産の額に応じて按分した額に2割加算して納税しなければならないというものです。

 

なお、特別寄与料を負担した相続人は、取得した相続財産の額から負担した特別寄与料を控除した残額に応じて、相続税を支払うことになります。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

相続税を専門に取り扱う珍しい税理士事務所。年間1,500件(累計7,000件以上)を超える相続税申告実績は税理士業界でもトップクラスを誇り、中小企業オーナー、医師、地主、会社役員、資産家の顧客層を中心に、低価格で質の高い相続税申告サービスやオーダーメイドの生前対策提案等を行なっている。各種メディアやマスコミから取材実績多数有り(※写真は代表社員 荒巻善宏氏)。

税理士法人チェスター http://chester-tax.com

著者紹介

連載相続専門税理士が教える「相続税申告」の重要ポイント

知らないと損、分かれば安心 相続税の申告80のギモン

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税理士法人チェスター

幻冬舎

かつては資産家や富裕層にしか関係ないものというイメージがあった相続税。しかし、2015年(平成27年)に基礎控除額が4割引き下げられ、相続税の申告を行うケースが大幅に増加。相続税はもはや多くの人にとって身近な税金にな…

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