高齢者世帯に潜む、賃貸派のリスク
若年層を中心に「マイホームはいらない」の志向は徐々に広がっていますが、結局のところ、購入か賃貸か、どちらがいいのでしょうか。
持ち家であれば、「毎月の家賃が不要」「借入の際に自宅を担保にできる」「子どもに財産として遺すことができる」などのメリットがあります。一方で、「固定資産税がかかる」「ローンの支払いに追われる」「リフォーム代、修繕代が定期的にかかる」「住み替えが容易ではない」といったデメリットがあります。
一方賃貸であれば、「ローンを気にすることはない」「固定資産税等税金は不要」「修繕費などは基本的に大家負担で気にすることない」「引越しがしやすい」などのメリットがあります。一方で「家賃を払い続ける必要がある」「年齢が上がるにつれて賃貸借契約の審査が厳しくなる」というデメリットがあります。
現役世代であれば、人それぞれの価値観で購入か賃貸かを選べばいいでしょうが、問題は、年金が頼りになる高齢者になったとき。毎月の家賃や厳しくなる審査が気がかりです。
内閣府『平成30年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、賃貸住宅に居住するのは11.3%。さらに「今までに入居を断られたことがありますか」の問いに「ある」が4.3%でした。
現在、65歳以上の単身世帯は約700万世帯。上記の結果を単純にあてはめると、約3万5000人の高齢者が入居審査の際に「NO」を突きつけられたことになります。貸主の立場からすると、今後、ニーズが高まる高齢者は魅力的である一方で、孤独死のリスクなどを考えると、できれば現役世代の人に入居してもらいたい、というのが本音でしょう。
調査はサンプル数も少なく、あくまでも計算上の話ですが、審査が通らず住む場所もない……と途方に暮れる高齢者は、今後、高齢化が進行するなかでますます増えると考えられます。
また総務省『家計調査報告(家計収支編)2019年 平均結果』によると、単身高齢者の公的年金受取額は11万5000円ほど。貯蓄がどれほどあるかにもよりますが、家賃に多くを割けるほど余裕がないことは明らかです
もちろん持ち家の場合も、年金生活に入ってからリフォームが必要になるなど、出費がかさむリスクはありますし、一概に持ち家だから安心とも言い切れません。
年金だけでは心もとないというのは、持ち家でも賃貸でも同じ。現役世代にいくら貯蓄ができるか……計画的な資産形成が重要ということに尽きるでしょう。
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