78歳男性、認知症妻と二世帯住宅暮らし…財産を円滑に相続するには?【司法書士が解説】

近年、認知症になる高齢者の数が増えており、事前に相続対策をする必要性が高まっています。その解決方法の一つが「家族信託」で、この制度を活用することで柔軟な財産管理が可能になります。今回は、相続人が認知症で判断力が衰えている場合、家族信託を使って次の相続人まで生前に指定しておく事例を紹介します。※本連載は、宮田浩志氏の著書『相続・認知症で困らない 家族信託まるわかり読本』(近代セールス社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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認知症の妻亡き後の承継先も自分で指定しておきたい

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

Q. 小林父郎(78歳)は、自宅を二世帯住宅に建て替え、1階で認知症の妻母子(72歳)と暮らしていますが、2階は長男一郎の家族が住んでおり、一郎の家族が母子の介護のサポートをしてくれています。また、父郎は賃貸マンションも1棟保有しています。

父郎の子供は、一郎の他、地方勤務の二郎、外国人と結婚し海外に暮らす花子の3人です。花子は、20年以上両親に顔を見せず、一郎や二郎ともあまり仲がよくありません。

父郎は、自分が死んだら、自宅を含めた財産はすべて母子に相続させたいと考えていますが、母子の亡き後、自宅は一郎に、賃貸マンションは二郎にあげたいと考えています。しかし、母子はすでに認知症が進行しており、遺言書を書けるだけの理解力はなさそうです。

自分亡き後の母子の生活を保障しつつ、遺言の書けない母子に代わって、母子亡き後の資産の承継先まで父郎が自分で指定したいと考えています。

 

<解決策>

林父郎は、長男一郎と公正証書で信託契約を締結します。その内容は、委託者兼当初受益者を父郎自身、受託者を一郎と定め、自宅・賃貸マンション・金融資産の管理を託します。

 

父郎亡き後の第二受益者を妻の母子に定め、引き続き一郎に母子のための財産管理と生活・介護・療養に関する費用の給付等を託します。父郎と母子が亡くなることで信託が終了するように定め、残余財産については、一郎に自宅を、二郎に賃貸マンションを、金融資産は一郎、二郎で分け合うように規定しておきます。

 

また、信託契約と同時に父郎の遺言公正証書も作成し、自分亡き後の信託財産以外の財産は、同時に作成する信託契約の信託財産にすべて追加信託する旨を規定しておきます。

 

なお、父郎の相続時に長女の花子から遺留分侵害額請求をされた場合は、受託者が信託財産(=母子の財産)から代償金を支払うことを想定します。

 

【信託設計】
委託者:小林父郎
受託者:小林一郎(予備的に小林二郎)
受益者:①小林父郎②小林母子
信託財産:自宅・賃貸マンション・現金
信託期間:父郎および母子が死亡するまで
残余財産の帰属先:自宅は一郎、賃貸マンションは二郎、金融資産は一郎・次郎に均等

 

<要点解説>

一郎は、受託者として、父郎の生前は父郎および被扶養者たる母子のために財産管理をし、父郎亡き後は母子のために財産管理をします。いわば、父郎と母子の成年後見人としての役割も実質的に担えるので、特別な事情がない限り、父郎夫妻が成年後見制度を利用することは想定しなくて済みます。

 

父郎夫妻の健康状態によっては、どちらか一方あるいは夫婦とも入院・施設入所の可能性があるので、マンションの賃料収入や保有する現預金で万が一収支が回らなくなれば、不動産を処分したり不動産を担保に融資を受けることも、受託者一郎の判断で行うことができます。

 

父郎亡き後に遺った財産は、遺言で信託財産以外の全遺産も信託財産に追加することで、結果として父郎の遺産全てが信託財産として母子に遺すことができますので、母子の財産管理に全く支障が出ず安心です。また、遺産分割協議の余地を排除できるので、話し合いに参加が難しい母子に後見人を就けずに済みますし、“争族”の火種となりうる長女の花子と話し合いをする必要もなくなります。

 

花子は、父郎の死亡(一次相続)時に何ももらえないので、全財産を相続した母子に対して遺留分侵害額請求をすることが可能です。この場合、母子自身が遺留分相当の代償金を支払うことができないので、代わりに受託者たる一郎が信託財産から支払うことになります。

 

母子の死亡(二次相続)時、残余財産から何ももらえない花子は、一郎・次郎に対して遺留分侵害額請求ができるかという問題ですが、まだ裁判所の判断が示されていないため明確に言い切れませんが、二次相続以降の受益権の移動(信託財産の承継)については、遺留分侵害額請求は及ばない、つまり遺留分の問題は一次相続の際にすべて解決済みになるという学説が有力視されています。

 

したがって、学説どおりに判例が確定すれば、父郎の当初の“想い”の通りに一郎・二郎に財産を渡してあげられることになります。

 

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宮田総合法務事務所代表
司法書士・行政書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・任意後見等の仕組みを活用した「認知症による資産凍結対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。
特に家族信託のコンサルティング分野では先駆的な存在で、日本屈指の相談・組成実績を持ち、全国でのセミナー講師、TVへの出演依頼、新聞・雑誌への寄稿も多数。
著書に『改訂新版 相続・認知症で困らない 家族信託まるわかり読本』(近代セールス社)、『図解2時間でわかる!はじめての家族信託』(クロスメディア・パブリッシング)など。

●YouTubeチャンネル『【家族信託】司法書士・宮田総合法務事務所』
https://www.youtube.com/channel/UCehL4z2fu5XHAfFrp9X7NLQ

著者紹介

連載生前の財産管理に有効な「家族信託」の活用事例

相続・認知症で困らない 家族信託まるわかり読本

相続・認知症で困らない 家族信託まるわかり読本

宮田 浩志

近代セールス社

家族信託は、不確定要素や争族リスクを最小限に抑え、お客様の資産承継の"想い"を実現する手段として活用できます。それには、家族信託を提案・組成する専門家は実務知識を、利用を検討する人は仕組みを十分理解しておく必要が…

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