現状維持も悩みが多い豪中銀

今回のオーストラリア準備銀行(中央銀行)理事会開催前の豪10年国債利回りは上下に変動し不安定な動きとなりました。主に米国長期金利の動きを反映した結果ですが、豪経済の回復傾向も変動要因と見られます。そうした中、豪中銀は緩和的な金融政策を維持しました。豪中銀が新たな政策の方向性を示さなかったことは、豪中銀のジレンマが背景にあるようです。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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豪中銀:景況感が改善する中、政策金利、イールドカーブコントロールを据え置き

オーストラリア(豪)準備銀行(中央銀行)は2021年3月2日の理事会で市場予想通り政策金利を0.1%に据え置きました。また、イールドカーブコントロール(3年物国債利回り)の目標(0.10%)も維持しました(図表1参照)。

 

日次、期間:2020年3月3日~2021年3月3日(日本時間正午) 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]豪政策金利と国債利回り、豪ドル(対米ドル)の推移 日次、期間:2020年3月3日~2021年3月3日(日本時間正午)
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

豪統計局が3月3日に発表した10-12月期のGDP(国内総生産)は前期比3.1%増と、市場予想の同2.5%増を上回りました。7-9月期のGDPは3.4%増と速報値の3.3%増から上方修正されました(図表2参照)。

 

四半期、期間:2015年10-12月期~2020年10-12月期、前期比 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]豪GDP成長率(前期比)の推移 四半期、期間:2015年10-12月期~2020年10-12月期、前期比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:豪ドル、イールドカーブコントロール、失業率

今回のオーストラリア準備銀行(中央銀行)理事会開催前の豪10年国債利回りは上下に変動し不安定な動きとなりました。主に米国長期金利の動きを反映した結果ですが、豪経済の回復傾向も変動要因と見られます。そうした中、豪中銀は緩和的な金融政策を維持しました。豪中銀が新たな政策の方向性を示さなかったことは、豪中銀のジレンマが背景にあるようです。

 

まず、豪中銀の主な金融政策や見解を振り返ると、政策金利は0.1%で24年まで維持する可能性を示唆しています。また、イールドカーブコントロールの対象として3年物国債利回りを0.1%で保持しています。上昇傾向が続く豪ドルへの見解として、豪ドルは最近数年のレンジの上限にとどまっていると声明に記しています。市場では豪ドル高へのけん制も一部で想定されていましたが、声明では従来の主張が繰り返されました。

 

次に、豪経済を見ると、順調な回復軌道となっています。新型コロナウイルスによる深刻な景気後退からの回復という特殊事情があるにせよ、3日に公表されたGDP成長率について豪統計局は60年超の統計史上、成長率が2四半期連続で前期比3%を超えたのは初めてと指摘しています。資源国の強みと、新型コロナウイルスの感染拡大の抑制に成功していることなどが背景です。

 

失業率も6.4%と豪中銀も低下傾向と述べています。しかし、豪中銀は22年末の失業率を5.5%と見込んでおり、コロナ前の水準である5%前半に戻るには時間が必要でしょう。

 

なお、声明でも明確に述べているように、インフレ率や賃金の上昇圧力は足元抑制されています。豪ドル高へのけん制ともなることから、豪中銀は事実上のゼロ金利となる緩和政策の現状維持の姿勢が感じられます。

 

しかしながら、悩ましい兆しも見られます。たとえば、豪中銀の声明でもさらっと述べていますが、豪雇用市場の求人は旺盛です。また、豪住宅市場についても、声明で最近の住宅価格上昇を指摘しています。ビジネス関連の貸出が伸び悩む中、住宅関連の貸出の伸びを指摘しています。

 

資源需要などを背景に豪経済は順調な回復軌道にある一方、失業率の改善など課題も残されています。また豪ドル高へのけん制から現状維持を選択したと見られます。ただ、異例とも言える長期にゼロ金利を維持する方針は、将来的に修正が求められる可能性があるうえ、米国長期金利の動向にも注意が必要です。維持といっても悩みは深いようです。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『現状維持も悩みが多い豪中銀』を参照)。

 

(2021年3月3日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

 

 

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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