起業をしたなら「いつか上場できるくらい、大きな会社にしたい」と多くの経営者が思っていることでしょう。本連載では、IPO・上場支援で数多くの実績をあげている株式会社タスク代表取締役の竹山徹弥氏がIPOの基本や必須事項、会社上場にまつわる裏話など解説していきます。今回は、上場まで最短2年半といわれるなか、最初にすべきポイントを見ていきます。

IPOを実施する決算期から遡る2期前のToDo

直前々期の最初に必要なプロセスは、監査法人との監査契約であり、その次は、監査法人のショートレビューにより指摘された課題への着手です。会計基準に準拠した財務諸表の作成や社内規程集の整備を通じ内部管理体制を構築すること、中期経営計画の作成に着手することなど、体制の整備期間と考えてください。

 

(1) 社内規程集の整備

直前々期で行う主要なToDoとしてまず挙げられる工程は、内部管理体制を整備するために社内のルール=社内規程集の作成です。定款や取締役会規則などの基本規程、組織規程、業務分掌規程、職務権限規程などの組織関連規程、販売管理規程や購買管理規程などの業務関連規程、経理規程、棚卸管理規程などの経理関連規程など約50規程のルールや基準を、規程体系に基づき新設・改定しながら内部管理体制の基礎を構築します。

 

社内規程集を整備することにより業務フローの見直しなども出てきますので、業務フローチャートの作成なども行います。これらを直前々期で整備し、翌期(IPOする期の前の期=直前期という)に本格的に運用を開始します。

 

(2)3ヵ年中期経営計画の策定

社内規程集の整備と同様に重要なToDoとなるのが、3ヵ年中期経営計画の策定です。直前期に入る前に整備された予算管理規程の中で規定された手続通りに実施し、3ヵ年の中期経営計画や単年度の予算を策定します。

 

筆者の経験ですと初めて中期経営計画を策定する会社のほとんどが、2年目や3年目の計画を社長の強い思いをベースに作成される場合が多く、実際には達成できなかったケースが散見されます。この計画の2年目が申請期というIPOを実行する期になりますので、直前期の期末に再度計画の見直しが必要となります。

 

このように、中期経営計画を策定するIPO準備期間は、上場後に実績が計画を下回ることのないように練習する期間でもあるのです。特に社長は、無理のない等身大の計画を作成することが上場後に会社のブランドを守るためにも肝要であることを認識しなければなりません。

 

最短で2年半の上場準備期間は、経営管理の質を上げていく練習期間と思ってください。特に直前々期に体制を整備出来れば、IPOをスムーズに成功に導くだけではなく、上場後の成長にも役立つこととなるでしょう。

 

 

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