上智大学名誉教授でもあるアルフォンス・デーケン(1932-)は、「医者はみなやぶ医者である。なぜなら、いくら医者が努力しても必ず失敗して、人間はいずれ死ぬ」と言っています。学会で医療安全を取り上げるほど、医師は患者の命よりも自身の身を守ることに必死になっています。
箱の中に赤のカードが45枚、青のカードが5枚入っているとします。皆様は中から1枚引くときにどちらを予想するでしょうか?
当然答えは、赤と予想するのが確率論の常識だと考えます。皆様は青を引いたときに自身の選択が誤っていたと考えるでしょうか? もちろん青が出る可能性は10%ありますが、確率論でいうと赤と答えるのが正解だと思います。
同様に、残念ながら医療現場では青が出るケースに出くわします。しかし青が出たからといっていちいち訴訟を起こされていたのでは大変です。最初から、間違えたくないならくじに挑戦しなければいいのであり、医療を受けない(くじを引かない)といった選択もあり得るわけです。
したがって究極の医療安全は何も医療を施さずに、自然経過を見るということになります(くじを引かなければ失敗しないし、テレビドラマのドクターXのように「私失敗しないので」ということはあり得ないわけです)。
「絶対受けないとだめな検査ですか?」への答え方
よく患者さんから「それは絶対受けないとだめな検査ですか?」「治療せずに放っておいたらだめですか?」といった質問を医療者の方は受けると思います。多くのまじめな医療者は一生懸命に理論やエビデンスを説明して、診療を受けさせようと努力しますが、そもそも絶対に受けないといけない医療なんてこの世の中に存在するでしょうか。
医療によってメリットを受けたいかどうか、宝くじを買って当選金を狙うかどうかは、希望する人が医療を選択する、すなわち1億円を望む人が宝くじを買えばいいのです。
車を運転すれば一定の確率で事故死する可能性がありますが、車そのものを廃棄しようとする運動はありません。車に乗ることで享受するメリットがそのリスクを上回ると計算するので、自動車を廃棄しないのです。もちろん事故を減らそうとする努力は必要で、制限速度未満で走行していれば死亡事故はほとんど回避できるかと思います。