8,000万円を前にして次男の嫁は動き出す…
「一、十、百、千、万、十万、百万、千万…ちょっとこれ、すごい金額…」とまさ子さんは思わず呟きます。ここから次男夫婦による義母の囲い込みが始まるのです…。
まさ子さんは今朝のことを夫に話します。
「ねえ、あんた。お義母さん、預金額いくらだと思う?」
「え? そんなの知らないよ。あって数百万円くらいじゃないの?」
「違うわよ、桁が違う!」
「え? 何それ?」
※※※
その半年後、乗り気がしない母をなだめすかしながら、足腰が悪くなったということを理由に次男夫婦は半ば強引に母を老人ホームに入れます。保証人は次男です。入所当時は認知症の症状はほぼなかったものの、入所してからは徐々に進行してしまいました。
まさ子さんは毎日毎日義母にささやきます。
「お兄さん(長谷川さんのこと)はお義母さんのお金を狙っているのよ」
「お兄さんはお義母さんと一緒に住みたくないから、仕事とウソをついてお母さんの面倒を見ないのよ」
「私たちはお義母さんのためにこんなに時間とお金を犠牲にして世話をしているのよ。ホームの保証人にもなってあげたのよ。お義母さんの子供でも長男(長谷川さんのこと)はダメだけど、次男は優しいわね」
という具合です。
最初は母も「何いってるのよ。あの子(長谷川さん)がそんなこと考えているわけないじゃない」といっていたものの、そんな生活がしばらく続くと段々とそんな気になってしまったのでした。
ネガティブな情報を頻繁に吹き込むことで、相手にそういった感情を持たせること自体、そう難しいことではありません。特に長男である長谷川さんと頻繁に顔を合わせているわけでもないし、面倒を見てくれているのが次男の嫁である以上、母もそのように考えざるを得ない状況に追い込まれてしまったのです。老人ホームにも入っていますし、自宅暮らしのときとは交友関係も変わり、立場が弱い母に対する一種の洗脳といえるでしょう。
長谷川さんは老人ホームに入ってしまった母の様子から、どうやら次男夫婦に母の預金が使われているような気がして、法定後見をすることを決心します。