エチオピアに投資している日本の投資家は少ないと思います。また、格下げがグローバルの金融システムに与える影響もほぼないと見られます。ただ、格下げの要因の一つが低所得国の債務支援の柱であるDSSI(債務支払猶予イニシアティブ、低所得国に一時的な債務返済猶予を認めるもの)の問題に絡んでいる点には注意が必要です。

調査官は重加算税をかけたがる
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
5/19(日)>>>WEBセミナー

低所得国の格下げ:エチオピアにネガティブウォッチを付与、一段の格下げも検討

格付け会社S&Pグローバル・レーティング(S&P)はエチオピアの長期債格付け(自国通貨建て、外貨建て共に)をBからB-に格下げすると共に、ネガティブウォッチ(格下げ方向で検討)を付与すると2021年2月12日に発表しました。

 

なお、2月9日にフィッチ・レーティングス(フィッチ)はエチオピアの外貨建て長期債格付けをBからCCCに格下げしました。フィッチの格下げや返済不安などを受け、エチオピア国債の価格は下落(利回りは上昇)しました(図表1参照)。

 

日次、期間:2020年2月17日~2021年2月12日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]エチオピア国債価格(6.625%、2024年償還)の推移 日次、期間:2020年2月17日~2021年2月12日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:DSSI、低所得国、新型コロナウィルス、G20

エチオピアに投資している日本の投資家は少ないと思います。また、格下げがグローバルの金融システムに与える影響もほぼないと見られます。ただ、格下げの要因の一つが低所得国の債務支援の柱であるDSSI(債務支払猶予イニシアティブ、低所得国に一時的な債務返済猶予を認めるもの)の問題に絡んでいる点には注意が必要です。

 

エチオピアの格下げを例に格下げの理由を振り返ると、大きく分けて2つの理由が挙げられます。1つ目は、景気悪化などに伴う財政状況の悪化です(図表2参照)。2つ目は主に先進国や国際機関からの債務返済支援の内容です。

 

年次、期間:2014年~2022年、20年以降はIMF予想値 出所:国際通貨基金(IMF)のデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]エチオピアのGDPと経常赤字対GDP比率の推移 年次、期間:2014年~2022年、20年以降はIMF予想値
出所:国際通貨基金(IMF)のデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

財政状況の悪化は明白でしょう。特に新型コロナウイルスの影響でGDP(国内総生産)成長率が悪化、エチオピアは経常収支もマイナス(赤字)続きで、対外債務などの対外ポジションが大幅に悪化しています。

 

次に、債務返済支援の問題です。低所得国の債務返済支援の柱のひとつはDSSIです。簡単に言えば借金を返せない低所得国に当分返済(現在は21年6月迄)を猶予するというものです。世界銀行のデータを見ると、DSSI適格国が73ヵ国あり2月月初の時点で45ヵ国が適用(債務返済の免除)を受けています。

 

反対に誰が債権者(支援者)かといえば主に先進国です。二国間融資などの借金の返済を、コロナ対応などを理由に返済を見合わせています。なお、このような国家間の決め事を格付け会社は不問にする姿勢です。

 

一方、民間の債権者(例えば低所得国が発行した債券の保有者)は債務免除などに積極的に参加しないと理解されていました。しかし、昨年11月のG20(財務相・中央銀行総裁会議)の声明でDSSIを超えた共通の枠組みとして、低所得国への債務措置を民間セクターを含む幅広い債権者の参加を得た形で実施するとしています。この背景にあるのが中国です。

 

中国は主に中国輸出入銀行などの政策銀行を通じてアフリカなどの低所得国に巨額の融資を行っています。そして、やや複雑なのは中国は政策銀行を民間扱いとしていることです。このあたりになると筆者では白黒の判断はできませんが、この構図だと先進国の免除が中国への返済に回される印象です。

 

昨年11月のG20で示された共通の枠組みで、民間債権者も負担を求めるなか、中国も政策銀行などが負担を負うことに合意しています。公平性を担保する点で、共通の枠組みは持続可能な低所得国の支援に向け前向きな動きと見られます。ただ、今回の格下げのように、債券保有者などの民間の負担増が低所得国にどう影響するかなど注意点は残されています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『エチオピアの格付けに見る国際支援の難しさ』を参照)。

 

(2021年2月15日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

\PR/ 年間延べ7000人以上が視聴!
カメハメハ倶楽部
「資産運用」セミナー

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

【5/7開催】ABBA案件の成功体験から投資戦略も解説
世界の有名アーティスト「音楽著作権」へのパッション投資とは

 

【5/8開催】使わない理由はない!?
金融資産1億円以上の方だからできる「新NISA」活用術

 

【5/8開催】「相続登記」を放置するとどんなトラブルに?!
2024年4月施行「相続登記の義務化」を専門弁護士がイチから解説

 

【5/9開催】認知症対策だけじゃない!
数世代先の相続まで見据えた資産管理・承継ができる
「家族信託」活用術

 

【5/9開催】「海外法人のつくり方・つかい方」
日本に居ながら自分の「分身」を海外に作るメリットは何か?

 

【5/11開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【5/12開催】良い案件を見つける3つの方策とは?
「日本型オペレーティングリース」投資の基礎講座

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録