目まぐるしく変化する現代社会において、ビジネスで成果を上げるには「チームワーク」が不可欠です。では、一体どのようにして「成果を上げられるチーム」を作ればいいのでしょうか? 16万人のコンサルティングとAI分析結果から判明した、自己管理・コミュニケーションスキームを解説します。※本記事は、越川慎司氏の著書『巻込力』(経済法令研究会)から一部抜粋・再編集したものです。

主語が「私たち」になれば、聞き手は自分事として動く

周囲を巻き込むためには、リーダーシップが必要になります。

 

リーダーシップとは、「チームのために」率先して初めの一歩を踏み出す心構えです。目的を「自分のため」ではなく「チームのため」と変えることにより、発言の主語が「私たち」に変わります。「私」ではなく「私たち」に変えて共通のこととして話し掛けることによって、聞き手は自分事として動いてくれるようになります。

 

私の会社での16万人の調査から、多くのビジネスパーソンは自己決定権を持つことに幸せを感じることがわかりました。これは自分の意思で行動を決めることを意味します。「内発的動機付け」と言われ、外部の指示や報酬ではなく、自分の興味・関心がある仕事に対して自分の意思で動くことによりモチベーションが高まるというメカニズムです。「べき論」や自己犠牲を強制しても相手の心を揺さぶることはできないのです。

 

相手にとっての「内発的動機付け」は何かを考え、一緒にモチベーションを高めることを前提として、いくつかの選択肢を提示しましょう。その選択肢の中から自分の意思によって選んでもらえれば、自発的に行動を起こしてくれます。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

しかし、そもそも目的が相手とズレていると協働するのは難しくなります。すり合わせや折り合いをつけたり、ときに自分が我慢しなくてはいけないこともあります。そのような状況にならないためには、目的を作る段階で、共同作業をすることです。実現すればワクワクする「私たち」の目的を共に作り、利害を一致させてから、行動するということです。そうすれば、表層的な対立が起きたとしても、根っこの方向性は一緒なので、複雑な交渉をする必要がなくなります。

 

例えば、社内の営業チームと開発チームの対立が起きたとします。大手顧客の要望を叶えたいという営業チームと、エンジニアのリソース不足に悩み開発工数を減らしていきたい開発チームとの対立です。この2つのチームが折り合いをつけて共通「目的」を共同して作るためには、足し算・引き算・掛け算をして打開策を図ることになります。

 

足し算とは、開発チームのリソース不足を補うための賃金コストと開発資金を増やすという選択肢です。引き算は限定するということ。顧客のすべての要望を実現するのではなく、開発リソースが抑えられて顧客が最も要望する点だけを実現するということです。

 

掛け算は組み合わせ。新サービスの開発に必要な機能を検証していく上で、大手顧客にも協力してもらい、その新機能へのフィードバックをもらうということです。新機能に追加したいという開発側の要望と、顧客の意見を取り込みたいという要望が掛け合わされています。

 

このような複数の選択肢(足し算・引き算・掛け算)の中から、一方が損したり得するようなアンバランスな関係を紐解き、「私たち」の目的を作っていきます。

 

さらに、論理で目的を作るのではなく、共通感情に基づきながら共通目的を作ることで、その後のプロセスにおいて巻き込みやすくなります。

 

①まず初めにメンバーをワクワクさせるような筋書きを描き、②それを実現させるというストーリーを話して、「腹落ち」させます。指示ではなく共感によってメンバーを動かすのです。

 

 

成果を出す方法が単純であった時代は、管理職はその自らの職責によって、直属の部下たちを強制的に動かすことが勝ちパターンでした。しかし、今のように複雑で変化が激しい環境の中では、成果の出し方が多様になり、現場のメンバーの自律的な思考と行動が不可欠です。相手の思考を止める強制的な指示では成果が出しにくいのです。そこで、お互いがWin―winになるゴールを一緒に作り、その達成したワクワク感で人を引っ張っていく必要があります。

 

 

周りを巻き込むことが上手い若手社員は、ストイックな努力や苦労で相手を強制的に取り込んでいません。単に、相手がハッピーになるイメージを与えているだけです。

 

目的を一緒に作り上げると、作業は「自分事」化していきます。職責とは関係なく協力者を増やしていく(巻き込んでいく)ためには、「自分」のためにやる(=Win)と意識してもらうことが必要です。会社勤めしているビジネスパーソンは、「私たち」や「会社(当社・弊社)」を主語に話し、「私」を主語にして話すことが少ないです。巻き込みたい相手が「私」を主語にして話すようになると、他人事から自分事化しているということです。

 

そして、作業のクオリティをある程度維持したいのならば、意識と行動の指針を作りましょう。ルールというほど厳格でなくていいと思いますが、目的に根差して手段を選択していること、成果のために他者を助けることなど、どのように考えて行動するか、という指針を最初に作っておけば、あとで混乱することはなくなります。メンバーがこの指針を意識して行動することで、1つの方向に向いて自発的に動く組織になっていきます。

 

このように、みんなで決めた指針に従って行動すれば、自然と強いチームになります。

 

たとえ今はリーダーシップを発揮するような立場でなくても、臆することなくこの指針作りに参画してください。チームで協働作業を進めることで、どうなりたいのか(to-be)は、全メンバーが意見を出していくべきことです。発言しないで後悔するより、否定されたとしても発言した方が後悔はしません。

 

自らがこうして指針作りに巻き込まれることは、今後自分がプロジェクトリーダーなどの重責を任されるときにも役立ちます。バックグラウンドが異なるメンバーと折り合いをつけて、共通の目的と行動方針を作るプロセスを学んでおくべきです。どっちのチームと働きたい?

 

 どっちのチームと働きたい? 

 

A 業務命令なので、この作業をしてください

B 一緒にこのプロジェクトの目的を決めよう

 

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