目まぐるしく変化する現代社会において、ビジネスで成果を上げるには「チームワーク」が不可欠です。では、一体どのようにして「成果を上げられるチーム」を作ればいいのでしょうか? 16万人のコンサルティングとAI分析結果から判明した、自己管理・コミュニケーションスキームを解説します。※本記事は、越川慎司氏の著書『巻込力』(経済法令研究会)から一部抜粋・再編集したものです。

重要なのは「クイック&ダーティー」の仕事スタンス

結果を出さなければ、周囲を巻き込むことはできません。

 

環境変化が激しく時間に追われている現代では、考えてから動くのではなくて、動きながら考えるという戦術によって成果が生まれます。

 

考えることをおろそかにしてもよいということではありません。完成度を追求してじっくり考えると、「迅速さ」がおろそかになります。相手の需要が見えない現代では、都度、相手の意向を確認しなければ、相手の意向とかけ離れたものとなりがちです。

 

そこで、「クイック&ダーティー」の仕事スタンスが大事になります。英語を直訳すれば「早く、そして汚く」となり、ネガティブな印象を持つかもしれません。しかし、欧米のグローバル企業で浸透しているのは、「完成度は多少低くても、早めにプロトタイプ(試作)を作る」という意味のものです。

 

多くの人は、作業に取り組む前に情報収集や報告書作成に多大な時間を費やし、提出期限ギリギリまで作業をしてから提出していると思います。この方法では上司のイメージとズレた報告書を作成してしまい、作り直しを指示されてしまいます。この場合、今までの作業時間がすべてムダになる可能性があります。

 

このようなリスクを低減させるために、骨子を作ってすぐに見てもらうのです。

 

完成度20%ぐらいで上司に見てもらい、フィードバックをもらいます。フィードバックを基に報告書に修正を加え、また3日後に持っていって確認する。中途半端な資料を上司に持っていったら怒られるのではないかと思うかもしれませんが、提出期限日に使い物にならないダメ資料を持ってこられるよりはずっといいです。

 

前職のマイクロソフトで優秀な若手社員であった部下は、私に何度も手書きの企画書を持ってきて意見を求めてきました。最初は、正直「忙しいのに、何度も…」と思っていました。しかし、繰り返しの意見交換によって双方誤解がなくなり、結果として企画書が早々に承認され、新たなビジネスが生まれました。上司も部下も手間がかからず嬉しい結果です。

 

最近の事業開発では、すばやく事業を立ち上げるために、仮説検証を繰り返していく「リーンスタートアップ」という手法が支持されています。このリーンスタートアップの中核になる手法がMVP(Minimum Viable Product)の活用です。新製品やサービスをお金と時間をかけて完成させて投入し、市場に受け入れられないかもしれないリスクを負いたくないのです。最低限の要件を満たすMVPを素早く作って顧客に試してもらい、フィードバックをもらって修正を繰り返すのがリーンスタートアップでのやり方です。

 

 

完璧主義者は、不安にさいなまれて前へ進めなくなります。前へ進まず、何もしないとリスクが膨れ上がるケースは多々あります。

 

巻込力とは、あなたの長所を最大限に発揮するために自分がコントロールできる範囲を広げるスキルです。不安なときこそ特に、早期にフィードバックをもらうことで作業の「やり直し」「差し戻し」というムダを減らし、短時間で質の良い資料が作成できるのです。

 

さらに、認識違いがないか、想定される要件を満たしているかを作成途中に確認することで、「必要以上の品質」を避けることもできます。派手なエクセルやキレイ過ぎるパワーポイントもこの類です。途中段階でのフィードバックをもらうことにより、ムダな作業を事前に阻止することができるのです。

 

私の会社では12社のクライアント企業に対して「途中フィードバック」を徹底し、分析を行うことにしました。完成度が20%のケースと、40%、50%、60%と4パターンで途中報告会を行い、その後の結果にどのような影響があったかをAI分析した結果、完成度20%でフィードフォワードをもらうことが、作業時間を最も多く削減し、提出先の満足度を高めることがわかりました。

 

多くの人は締め切りギリギリで資料を提出します。提出先の相手は提出されてから確認し、それから差し戻しやダメ出しをするわけですが、結果的に最終成果物になるまで時間がかかります。提出後に相手が認識違いに気づくとガッカリして、エネルギーと時間が奪われます。

 

事前にお互いの意向を確認して認識違いを埋め合わせることで、自分も相手も作業時間が圧縮され、ストレスも軽減します。

 

未完成段階でフィードバックを上司に求めたときに、「要は何が言いたいの?」と疎まれたとしても、「提出後に指摘されるより、先に改善点を聞けた方がラッキーだ!」と開き直ってください。周囲を巻き込んで仕事している人は、フィードフォワードを習慣化しています。制作プロセスに相手の意見を取り入れる。その上でブラシュアップした方が格段に作業時間が短くなると共に質の高いアウトプットができます。

 

 どっちの方法だと残業が減る? 

 

A 言われたとおりの資料を作るため、まずは関連する資料を探そう

B とりあえず方向性があっているか、上司に確認しながら資料作ろう

 

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越川 慎司
株式会社クロスリバー
代表取締役社長 CEO/アグリゲーター

 

 

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巻込力

巻込力

越川 慎司

経済法令研究会

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