翌年度以降に実施する税金まわりの施策内容などをまとめた「税制改正大綱」。与党の税制調査会が各府省庁や業界団体の要望を踏まえて12月に決定しますが、「令和3年度税制改正の大綱」ではコロナ禍に議論された「脱ハンコ」もテーマにあがりました。今回は大綱のなかの「税務関係書類の押印廃止」について、相続税申告を数百件経験した相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の戸﨑貴之税理士が解説します。

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申告書への押印は必要であったのか

そもそも申告書への押印制度は必要だったのでしょうか。

 

押印に際して、納税者から「実印ですか? 認印ですか?」と質問を受けることがあります。

 

正しくは、「実印でも、認印でもどちらでもOK」です。

 

趣旨としては、納税者本人が、その申告内容を理解したうえできちんと確認し、本人が押印したことが間違いないであるということの証としての押印作業となります。

 

相続税においては、遺産分割協議書に実印での押印が必要であることから、納税者のこだわりがないようでしたら、より説得力を持たせることも踏まえて申告書についても実印を押していただくようお話しています。

 

また、実印が必須というイメージのある遺産分割協議書についてですが、実は、民法上では、協議書は実印でなければならないとは明記されていません。そのため、裁判所では、相続人本人の印鑑が押されてなくても有効と扱われます。

 

遺産分割協議書については、裁判所以外では捺印済みの協議書と印鑑証明書をセットで求められる場面があるため、このようなイメージが定着しています。

 

具体的に使用する場面としては、下記の通りです。

 

 ・銀行&証券会社・・・故人の預金の相続手続きのために必要
 ・法務局・・・故人の不動産を相続人名義に変更するために必要
 ・税務署・・・相続税の納税義務者が分割内容を証明するために必要

 

つまり、遺産分割協議書というものは、実印での押印を要求される場面が多いという実務的な側面から実印での押印を行うようになっているということになります。

 

■まとめ

申告書への押印制度廃止に伴い、実務的な面では税理士や納税者にとっては事務的な面では非常に手間や負担は軽減されるのではないでしょうか。

 

相続税申告においては、協議書については実印での押印作業が必要となるため、すべてがハンコレスにはなりません。

 

しかし、相続税の申告書については、原則全ての相続人の押印作業が必要になるため、押印書類の枚数も多いことから、協議書のみの押印となれば、手間としては軽減されることは間違いないでしょう。

 

 

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