※本記事は、2016年10月9日刊行の書籍『あなたの資産を食い潰す「ブラック相続対策」』(株式会社財産ブレーントラスト・秋山哲男著)から一部を抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

税理士が「税務について意外と知らない」実態が…

住宅メーカーの元社員の経験談に、こんな話がありました。

 

「賃貸住宅を建てると、相続税対策になるのに加え、固定資産税が6分の1になります」。更地を所有していた人への営業として、そう進言したところ、のちにその方からお叱りの電話がかかってきたそうです。

 

「顧問税理士が『固定資産税が6分の1になるなんて、そんなことはありえない。営業マンがウソをついている』と言っています! どういうことですか?」

 

賃貸物件およびその土地は、相続税評価減が適用できますが、更地に家屋を建てることによる課税上の優遇措置は、相続税だけでなく固定資産税にも及びます。

 

住宅やマンションなどの敷地として利用されている住宅用地については、地方自治体により特例が設けられており、現在、小規模住宅用地は住宅1戸につき330㎡まで、固定資産税の課税基準が6分の1に軽減されます。たとえば、1棟4部屋のアパートであれば、800㎡(200㎡×4戸)に対し、この特例が適用されるというわけです。

 

先の税理士が、このことを知らなかったのはたまたまなのでしょうか。実は、固定資産税は「賦課課税方式」といって、国・地方団体等が納めるべき金額を計算し、交付された「賦課決定通知書」に従って納税することになります。自動車税や不動産取得税もこれにあたります。

 

一方、税理士が日々の業務で取り扱うことが多い所得税や法人税は、税法に基づいて所得や税額を計算して申告する、いわゆる申告納税方式をとります。つまり、所得税や法人税には詳しい税理士でも、賦課課税の税金にはタッチしたことがないというケースもままありえるのです。

 

さらに、賦課課税方式の税金については、徴収する側が一方的に算出してくるため、節税の余地はないとして、固定資産税の税額の高低について検証はほとんどされていないというのも実態でしょう。しかし、ケースによっては、固定資産税にも節税の余地があるのです。

 

本当に信頼できる?
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

◆「自宅」「事務所」かで、固定資産税が大きく変わる

 

私のもとに、都心部に5階建てのビルを持つお客様がいらっしゃったことがあります。話を聞くと、1~2階が事務所、3階が事務所と自宅の倉庫、4~5階が自宅として登録しているといいますが、ここ十数年間、3階の倉庫の大半は自宅の荷物で占められているのが実情でした。

 

固定資産税は、自宅より事務所の方が高くなりますので、実態に鑑みて、高額な固定資産税を支払う状況が続いていたわけです。そこで、「この際、実態に即した税金額にしましょう」と提案し、物件内の写真を持参した上で、都税事務所で交渉しました。

 

結果、申し立ては受け入れられ、これまで200万円以上を払っていた固定資産税額が、120万円に減額となりました。4割減の節税効果です。さらに、減額を承諾してもらえたところで、これまでの5年間分の還付も交渉し、利子までも含めた約600万円を取り戻すことができました。

 

特に中小企業オーナーは、自宅と事務所を兼用するなど、あいまいな使い方をしていることも多く、固定資産税についても、実態に即したマメなチェックが必要なのです。

 

賦課課税方式の固定資産税の場合、万一間違いや事実誤認があったときには、納税者サイドから訂正を求めなければなりません。そのため、原則的に毎年4月1日から20日にかけ、管轄の自治体で課税内容が記された固定資産税課税台帳の閲覧が可能となっており、内容に不服があれば、申し立てもできます。

「コミュニケーション能力のない人」が税理士になる?

相続は、遺産分割協議がまとまらない限り、完了しません。申告の期限は、相続開始があったことを知った日(通称は被相続人の死亡日)の翌日から10カ月以内。故人が亡くなった悲しみに暮れる間もなく、遺産分割や遺産の名義変更をすませ、相続税を納めなければならないのです。

 

「うちの家族はみんな仲が良いから、話し合いもスムーズにいくはず」「それほど財産もないから、モメないでしょう」…いえいえ、油断は禁物です。今までの経験から、「大丈夫」と自信たっぷりに言われた家族ほど、モメずに終えた相続を見たことがありません。

 

司法統計によると、平成25年の遺産分割における裁判所の調整・審判の件数は、10年前と比べて約30%増加しています。しかも、相続をめぐる裁判を財産額別に見ると、5000万円以下の財産額で争っている家族が、全体の75%超を占めるというデータも明らかになっています。

 

財産が少ないからモメないのではなく、財産が少ないからこそモメるというのも、相続の実態なのです。では、無用な〝争族〟に発展しないためには、いかに話し合いを進めるべきなのでしょうか。

 

遺言を残しておくなどの事前の手当てをしてもなお、家族だけで話し合いをすると、とかく感情的になりがちです。私は、分割協議こそが、第三者の立場で、公平中立な判断をしてくれる専門家の登場が求められる場面だと思います。

 

しかし、数多くの分割協議の場に立ち合った経験から申し上げると、税理士に関しては、正直なところ、「(分割が)決まったら知らせてください。計算します」というスタンスの人も多いのです。

 

「税理士の仕事は税金を計算し、申告すること」と言われればそれまでですが、他の理由の一つには、あくまでも個人差があるということを大前提にいうと、税理士という職業を選択する人は、「コミュニケーション能力に長けている人」より、どちらかといえば苦手な人が多いように見えるのです。

 

「営業が苦手だから、資格商売の税理士を選びました」。私の知り合いの税理士の中にも、そんなふうに口にし、企業勤務の税務の道を選んだ人がいます。独立した税理士を見ていても、決まった顧問先に対し、業績を踏まえた税金の計算、節税対策をすればOKという認識の人も多いようです。

 

顧客の顔より、数字を見る。あるいは〝手を汚さない〟後工程の業務に終始するというスタンスでしょうか。

 

もちろん、これまでは「税金の計算」だけでもよかったかもしれません。しかし、今はIT会計の普及や価格競争の激化などもあり、税理士であっても、営業力、提案力が求められる時代に突入している実態を、税理士の方には、今一度噛みしめてほしいと思います。

あなたの資産を食い潰す 「ブラック相続対策」

あなたの資産を食い潰す 「ブラック相続対策」

秋山 哲男

幻冬舎メディアコンサルティング

恐ろしい「相続対策の裏側」と「知っておくべきポイント」を大公開! ・相続税対策のうち8割が実は不要!? ・バックマージンが横行する業界の実態 ・相続後にお荷物と化す無意味なアパート・マンション ・税理士のうち約半…

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