「分散投資」をこれまでと違う視点で考える
新しいマインド:世のなかは、基本的に不安定である
先進国に位置づけられる日本に住んでいると、世のなかというのは基本的に安定しており、昨今のコロナ禍の状態は極めて特殊な状態であると感じてしまいがちです。
一方、学生時代に学んだ日本史や世界史を思い出してみると、国、社会制度、文化などが次々と変わり、不安定な状況が数多くありました。
近年、特に1990年以降で考えても、ソ連の崩壊、ユーロ圏の登場、中国の台頭など、世界経済の枠組みは大きく変わりました。昭和の時代、日本は世界の主要国のなかで最も高い成長を果たしましたが(円の価値は約3倍となりました)、反対に平成の時代は最も低い成長となりました。
そして2020年、新型コロナウイルスという予期せぬショックが訪れ、世界経済は過去に類を見ない打撃を受けています。そして、今後は急速なデジタル化により、世界は大きく変わっていくでしょう。
このように世のなかは絶えず変化しており、「不安定」であるのが普通の状態です。「卵を一つの籠に入れるな」という有名な分散投資の教えは、このように不安定であることが普通だからこそ、個人が幸せな人生を送るための原則となってきたのです。
社会が「不安定」というのは、私たちにとって必ずしも悪いことでばかりではありません。不安定さとは、世のなかが長期により良い姿に向かって変わっている過程でもあるからです。
昭和の日本や現在のアメリカは「特殊な環境」にある
ここで改めて、分散投資について考えてみましょう。
日本で生まれ、日本で教育を受け、日本の会社で日本のお客様相手に働いている方なら、その方の人的資産は、日本資産100%といえます。そんななかで、さらに金融資産のほとんどが、日本円か日本資産になっていないでしょうか?
もしくは、あくまで日本資産が中心であり、外国の金融資産は少し持つ程度になっていないでしょうか?
実は、分散投資の教訓が有効ではない特殊な環境もあります。典型的な例としては、住んでいる国が「高成長」をしているケースです。
日本においては、昭和の時代が、世界的に見て正にその環境にありました。当時の日本は、アメリカなどの西側陣営のなかでの優秀な工場として大きな成長を享受し、終身雇用という安定した雇用慣行もできあがりました。
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