がん、糖尿病、嚥下困難、胃ろう、認知症、独居うつ、褥瘡など、様々な病気の知識を持っている方は多くても、実際に患者の声を耳にする機会はほとんどありません。本連載は、国民健康保険坂下病院名誉院長の髙山 哲夫氏の著書『新・健康夜咄』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、高齢患者の声を「現役医師」の目線からお届けします。

 

98歳のNさん。心臓の働きが悪く腎臓もうまく機能していません。呼吸困難、むくみで何度も入院され、その都度なんとか改善、退院されるのですが、最近は寝ていることが多くなってしまいました。今回は家へは戻れないように感じます。

 

Yさん、Nさんの例に限らず肺炎は治ったがそのまま寝たきりになってしまった、などの例は珍しくありません。また脳梗塞は落ち着いたが意識は戻らない。意識はあるが食べることがまったくできない。意識がなく食べることもできず、ただベッドに寝ている。

 

このような患者さんは当然ながら社会に戻ることはできません。医学部教育で学んだ救命救急医療だけでは対応できない。少なくとも現在の医療ではどんなことを試みても回復が望めない。そんな状態があるのです。

 

そんな状態になった時どうすれば一番いいのか。その決定は医療従事者でもご家族でもなく、患者さん自身が行うべき問題です。

 

でも意識のない患者さんは意思表示ができません。現在の医療で治せない状態になった時、自分はどうするか。生前に自分の意思表示をしておくことが必要な時代になったと思います。

 

 

※本記事は連載『新・健康夜咄』を再構成したものです。

 

 

 

髙山 哲夫

国民健康保険坂下病院名誉院長

 

 

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新・健康夜咄

新・健康夜咄

髙山 哲夫

幻冬舎メディアコンサルティング

最新医療機器より大切なものは、患者さんを想う心――。著者のところには、がん、糖尿病、嚥下困難、胃ろう、認知症、独居うつ、褥瘡など、様々な病気をもつ高齢の患者さんがやってくる。地域の高齢な患者さんの声に真摯に耳を…

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