「繰越欠損金」の取り扱いはどうなる?
■概要
通常の事業年度と同じく繰越欠損金の利用は可能です。
資本金1億円超の会社や資本金5億円以上の完全子会社は繰越欠損金の利用につき、所得金額の50%までの使用制限が生じますが、それも同様です。解散事業年度、清算事業年度につき特例で制限が生じないということはありません。
債務免除を受ける場合など、多額の利益が出る可能性もありますので、特に欠損金の制限がある会社は納税も意識しないといけません。
■残余財産がないと見込まれる場合
清算事業年度については、残余財産がないと見込まれる場合は、期限切れ欠損金を利用することができます。
残余財産がないと見込まれるかどうかは、清算事業年度毎に判定を行う必要があります。残余財産確定までに時間を要する場合は、複数回申告することが想定されますが、それぞれで判定を行います。法人税基本通達12-3-8によると、債務超過であれば要件を満たすことになります。
ただし、残余財産確定事業年度については債務超過の状態だと通常の清算はできませんので、純資産が0円の状態であれば、残余財産はないこととなり、期限切れ欠損金を利用できると考えられます。
また、期限切れ欠損金を利用する場合は、残余財産がないと見込まれる書類を申告時に添付する必要があります。実務上は、資産、負債を時価に修正した実態貸借対照表などを添付します。時価については、事業年度終了時の処分価格によりますが、事業譲渡を前提とした解散である場合で継続して他の法人で事業供用される見込みであるときは、譲渡される場合に通常付される価額によります(法人税基本通達12-3-9)。
■期限切れ欠損金の計算方法
具体的な期限切れ欠損金の金額は、下記①から下記②を控除した金額となります。
①適用年度終了の時における前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額の合計額
②青色欠損金額又は災害損失欠損金額
※上記①は法人税法基本通達12-3-2において、別表5(1)の期首現在利益積立金額の合計額とされています。期限切れ欠損金は俗称ですので、適用期限を経過した別表7(1)の繰越欠損金ということではなく、別表5(1)を確認すれば損金可能限度額が分かります。
■欠損金の繰戻還付
通常は、中小企業者等以外は繰戻還付の適用は停止されていますが、解散事業年度、清算事業年度に関しては、資本金の大きさに関わらず適用可能です。
「繰越欠損金」の引継ぎの考え方
たとえば100%子会社など完全支配関係のある会社が清算した場合、親会社は子会社が使用し切れなかった繰越欠損金を引き継ぐことが可能です。その代わり、親会社で子会社株式の清算損失を損金にすることはできません。清算損失を損金にして繰越欠損金も引き継ぐと、二重で損失を取り込むことになりますので、制限を入れています。
また、繰越欠損金を全額引き継げるのは、支配関係が生じてから5年を経過している場合、子会社設立から継続して支配関係がある場合などに限られます。清算する子会社が過去5年以内に買収されたものである場合は、買収した事業年度以降に生じた欠損金しか引継ぐことができないため注意が必要です。
その他の税金の取り扱い
■事業税
事業税は申告書を提出した日を含む事業年度の損金になります。そうすると、残余財産確定事業年に生じる事業税は損金算入されるタイミングが失われてしまうため、残余財産確定最終事業年度において事業税を損金算入させることができます。
また、外形標準対象法人については、解散の日における資本金が1億円を超える場合に適用されます。この場合、解散後に減資をしたとしても、清算事業年度は外形標準の対象となります。
ただし、清算事業年度中は資本割については課せられません。加えて、残余財産確定した日を含む最終の清算事業年度は、付加価値割、資本割ともに課税されません。
■消費税
解散、清算中の事業年度であっても消費税の納税義務は通常通りです。資産の整理による売却が多額になる場合などは、消費税の納税があることにも留意する必要があります。
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】