●日経平均は8連騰し約29年5ヵ月ぶりに終値で25,500円を回復、ただ相当買われ過ぎの水準。
●それでも日経平均は上値抵抗線の24,000円水準を上抜け、長期上昇トレンドをしっかりと回復。
●米政局の懸念再燃などで、日経平均は大きな調整も、ただ流動性相場が上昇基調を支援しよう。
日経平均は8連騰し約29年5ヵ月ぶりに終値で25,500円を回復、ただ相当買われ過ぎの水準
日経平均株価は11月12日、前日比171円28銭高の25,520円88銭で取引を終えました。終値で25,500円台を回復するのは、1991年6月4日以来、約29年5ヵ月ぶりとなります。日経平均株価の10月30日の終値は22,977円13銭でしたが、翌営業日から8連騰し、値上がり幅はすでに2,543円75銭に達しています。ただ、短期間で大幅に上昇したことから、相場には過熱感がみられます。
実際、日経平均株価について、相場の過熱感を判断するオシレーター系チャートを確認すると、「RSI(相対力指数)」の数値は、昨日時点で79.4%となっており、一般に買われ過ぎとされる70%を超えています。また、RSIよりも動きが速いとされる「ウィリアムズのR」の数値は、昨日時点で-2.5%となっており、一般に買われ過ぎとされる-20%を大きく上回っています。
それでも日経平均は上値抵抗線の24,000円水準を上抜け、長期上昇トレンドをしっかりと回復
株価上昇のきっかけとしては、①米大統領選を通過し、政局の不透明感が払拭されたこと、②ワクチン開発進展の報道で経済活動の正常化期待が高まったこと、が挙げられます。いずれも景気敏感な日本株には強い追い風であり、海外投資家は先週、日本株の現物を約3,573億円買い越し(東証、名証の1・2部等の合計)、先物を約7,421億円買い越しています(日経225先物、日経225mini、TOPIX先物、ミニTOPIX先物の合計)。
海外投資家の買いを機に、空売りをしていた向きの買い戻しなどで株高に弾みがつき、日中下げたところでは、買い遅れた投資家による押し目買いが相場を支えたとみられ、このような動きが日経平均株価の8連騰につながったと思われます。日経平均株価は、2018年以降、強い上値抵抗線になっていた24,000円水準を明確に上抜け(図表1)、春先に終了したかにみえた長期上昇トレンドも、しっかり回復してきています(図表2)。
米政局の懸念再燃などで、日経平均は大きな調整も、ただ流動性相場が上昇基調を支援しよう
ただ、前述の通り、日経平均株価には相応に過熱感があるため、いったん調整売りが出てもおかしくはありません。調整売りのきっかけとなる材料としては、①米政局の不透明感が再び強まること(12月8日までに選挙結果が確定せず、選挙人が決まらない場合など)、②新型コロナウイルスの新規感染者数が予想外のスピードで急増し、経済活動の正常化期待が大きく後退すること、などが考えられます。
これらが実際に市場で材料視された場合、日経平均株価は比較的大きな下げとなる恐れがあります。なお、一般に、強い上値抵抗線を大きく上抜けた場合、その上値抵抗線は調整時に強い下値支持線として作用するケースが多いため、日経平均株価が大きく調整した場合は、前述の24,000円水準が下値目処として意識されやすいと思われます。ただ、世界的な流動性相場が、今後も日経平均株価の上昇基調を支援するとみています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日経平均株価~過熱感はあるが地合いは改善』を参照)。
(2020年11月13日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト