2020年7~9月のM&A(適時開示ベース)は199件と、前年同時期より件数が10件減ったにもかかわらず、取引額は前年同期の3倍にあたる8兆2140億円と、四半期ベースで過去最高に達した。今回は、株式会社ストライク執行役員広報部長の日高広太郎氏が、7~9月M&A取引額好調の理由や、今後の見通しなどを解説する。

非効率性を指摘される「親子上場」…今後の見通しは?

実際に7~9月期は、国内外で取引額が1兆円を超える大型案件が相次いだ。買われる立場となったのは、塗料国内最大手の日本ペイントホールディングス。筆頭株主でシンガポールの同業、ウットラムグループが日本ペイントの第三者割当増資を引き受ける。出資比率を39%から59%に引き上げ、子会社化する。取得金額は1兆1851億円に上り、日本企業を対象とするM&Aとして過去最大だ。

 

ちばぎんアセットマネジメント調査部の奥村義弘シニアアナリストは「グループ経営の意思決定を一本化、迅速化させるため、今後は上場子会社の買収が増えてくるだろう」と予測する。景気減速が続くなか、企業が経営基盤の強化を求められているためだ。

 

親会社と子会社が共に上場する「親子上場」は、配当を通じてグループ全体の利益が外部に流出してしまうなど、非効率な側面が指摘されている。奥村氏は「国内でも総合電機や商社などが上場子会社を完全子会社化するなど、グループ再編が起こるのではないか」と話す。

 

そのほかの大規模案件で目立ったのが、8月初めにセブン&アイ・ホールディングスが発表した米コンビニ第3位のスピードウェイの買収(2.2兆円)。セブンは今春にスピードウェイの買収に動いていたが、金額が折り合わず、断念していた。新型コロナの影響などで買収金額が低下したタイミングで今回は再交渉がまとまったとみられる。

 

9月にはソフトバンクグループ(SBG)が傘下の英半導体設計大手アームを最大4.2兆円で売却すると発表した。相手は米半導体大手のエヌビディア。金額は日本企業が手がけるM&Aとして歴代2位にランクされる。SBGがアームを3.3兆円で買収したのは2016年9月。今回約9000億円規模の差益を手にすることになる。

 

7~9月のM&A金額上位10は次のとおり。

 

1.ソフトバンクグループ、英半導体設計大手アームを米エヌビディアに売却(4.2兆円)
2.セブン&アイ・ホールディングス、米コンビニ大手のスピードウェイを買収(2.2兆円)
3.ウットラムグループ(シンガポール)、日本ペイントホールディングスを子会社化(1.18兆円)
4.武田薬品工業、大衆薬子会社の武田コンシューマーヘルスケアを米投資ファンドに売却(2420億円)
5.キリン堂ホールディングス、MBOで株式を非公開化(338億円)
6.フェローテックホールディングス、半導体ウエハー製造の中国子会社を現地の地方政府などに譲渡(296億円)
7.ティーガイア、携帯電話販売の富士通パーソナルズを子会社化(287億円)
8.住友ベークライト、川澄化学工業をTOBで子会社化(270億円)
9. アント・キャピタル・パートナーズ、ソフトブレーンをTOBで子会社化(232億円)
10.昭和産業、三井物産傘下のサンエイ糖化(愛知県知多市)を子会社化(150億円)

 

 

日高 広太郎

株式会社ストライク 執行役員 広報部長

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