菅内閣発足後も、M&A市場の活況は続くのか…
菅義偉内閣が16日に発足した。安倍晋三・前首相の経済政策「アベノミクス」を継承することを標ぼうする菅氏が、どのような政策運営をするかに経済界の期待と注目が集まっている。
M&A仲介大手のストライクが集計した8月のM&Aでは、大型案件が相次いだ。大手メディアのインタビューで、生産性向上に向けた中小企業の再編の必要性を訴えていた菅首相のもと、M&A市場は活況を続けるのか。有力アナリストやエコノミストに聞いた。
今後、中小企業や地方銀行の「再編後押し」に期待
菅政権によるM&A市場の後押し効果を期待するのは、第一生命経済研究所の熊野英生・首席エコノミストと松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリスト。熊野氏は「中小企業の競争力強化や生産性向上を目指して、M&Aを通じた再編が促されるだろう」と話す。特に観光業や外食などのM&Aが増えるとみる。
窪田氏は「地方銀行の再編により地銀の規模が拡大することで、1行当たりが抱える事業承継や企業売却の案件が増えることで、M&Aのマッチングが進む」と予測する。市場関係者の間では、中期的にはM&Aや事業承継を後押しする減税などの優遇策が打ち出されるとの期待が高まっている。
期待の背景には、菅氏が日本経済新聞など大手メディアのインタビューで、中小企業や地方銀行の再編に前向きな姿勢を示したことがある。中小の成長や効率化の阻害要因とも指摘される中小企業基本法の見直しにも言及したとされる。新政権でアベノミクスが継承されれば、大規模な金融緩和も維持される見通しで、買い手企業が買収資金を調達しやすい環境も続きそうだ。
新政権、外交面では慎重な見方も
ニッセイ基礎研究所の井出真吾上席研究員は、「新政権になっても短期的にM&Aを促すような具体策は期待できないだろう」と指摘する。ただ、同氏も「新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、政府が主導しなくても事業承継や事業売却などのニーズは拡大していく」と予測している。