「住宅を購入するなら今が最も買い時です」
不動産業者の営業マンにはいろいろなタイプの人がいます。たくさんの情報を提供して比較させてくれる人もいれば、ヒアリングを重視する人もいますし、あるいはじっくりと時間をかけて契約までもっていく人もいるでしょう。千差万別です。
どのような営業マンが良い・悪いということはありません。それぞれの営業マンと話してみて、自分に合っていると感じる相手を見つけることが大切です。きちんと相手の人間性を見極めたうえで、特に話しやすい人を選ぶといいでしょう。
営業トークに着目すると、おおむねいくつかのパターンがあります。
例えば、「金利の動向」や「税制」をもとに、「住宅を購入するなら今が最も買い時です」と勧めてくるような話し方です。金利は常に変化するものですし、税制も変わるものではありますが、言い方によっては「今がチャンス」と伝えることができるのです。
このような話が出てきた場合には、「あ、これも営業トークなんだろうな」と考えてみてください。そうすることで、冷静に対応することができるようになります。
「ここ数十年で最も金利が低水準にあります」と言われれば、確かにおトクなような気もします。ただ、必ずしも購入するべきかどうかということについては、諸般の事情なども考慮して冷静に判断しなければなりません。
税金に関しても同じです。住宅購入に関する税金の優遇が行われていたとしても、それは今だけなのか、それとも将来的に続くのかは分かりません。もしかしたら、もっと優遇されるときがくるのかもしれません。いずれにしても、参考程度にしておくほうが無難でしょう。
王道の営業トーク「家賃が無駄」の真相は?
また、「家賃を払い続けてもなにも残りません」という、「家賃が無駄だからマイホームを購入しましょう」などの営業トークもよく聞かれます。確かに家賃を払うぐらいなら、マイホームを購入してしまったほうがいいかもしれません。
そのときに考えるべきなのは、マイホームと賃貸におけるメリット・デメリットでしょう。将来的に安定した生活を実現したいのであれば、家賃を支払い続けるよりも、住宅ローンを返済したほうがあとに残るものがあります。
ただし、なかには賃貸住宅の良さである引っ越しへの柔軟性や、あるいはいろいろなタイプの住まいに住めるというメリットを重視する人もいるでしょう。そのような人の場合、家賃が無駄になるという部分にはあまりピンとこないかもしれません。
実際に住宅ローンを組んでみると分かりますが、月々の支払いは家賃とそれほど変わらない金額になります。持ち家では、維持管理費や固定資産税など賃貸住宅では発生しないような費用もかかりますが、それでも月々で換算すると大きな違いはありません。
賃貸住宅に支払い続ける家賃を無駄だと考えるのか、それとも賃貸住宅ならではのメリットを享受するほうがいいと考えるのか。営業マンのトークに惑わされず、自分なりの基準を持っておくことが大切です。
イメージだけでなく、数字で出してみることによって理解が進むこともあります。もし具体的な金額として実感がわかない場合には、シミュレーションをしてもらうようにしましょう。リアルな金額を知ることによって、よりイメージしやすくなります。
「将来不安」という最も分かりやすい後押し
もう少しで購入へと至りそうなのに、あと一歩が出ないという人には、「将来不安」をあおることによって背中を押す営業トークもあります。将来不安をあおるとは、「今、マイホームを購入しなければどうなってしまうのか」ということを、購入希望者に具体的にイメージさせることです。
例えば、「30年の住宅ローンを組むとしたら、遅くとも定年までには返済できるように組まないと、生活が苦しくなりますよ」「定年後にまで住宅ローンを返済し続けるのは大変ですよね」「退職金、本当に期待できますか?」などのトークが考えられます。
このように将来の不安をあおるトークというのは、マイホームの必要性を認識してもらうには効果的です。
営業マンのトークにはいろいろな種類のものがありますが、多くの営業マンは前向きに検討してほしいという願いから言葉をかけています。しかしなかには売ることだけを考えた営業マンも少なからずいることも確かです。
そのうえで、目の前の営業マンは本当に自分たちのことを考えてくれているのかを想像しながら営業トークに耳を傾け、信頼できるかどうかを見極めることが大切です。
久水 陽介
株式会社四つ葉企画 代表取締役