「ワンストップ」サービスができるアドバイザーを
前回(本連載第9回)は、クリニックM&Aを依頼するのにふさわしいアドバイザーの条件とは何なのか、最低限必要となる5つの条件のうち条件1と条件2について紹介しました。今回は残りの3つの条件を見ていきます。
条件1:M&Aを専門的に行っている
条件2:信頼関係を築ける
条件3:的確なスキームや価格を見極められる
専門知識やノウハウを駆使して正しいスキームや価格を見極め、提示してくれるかどうかを見ます。提示された内容が理解できないときや納得いかないときは、きちんと分かるまで説明を求めてください。それで相手がいい加減な説明しかしてくれなかったり、根拠をきちんと示せなかったりする場合は、相手に十分な知識やノウハウがないのかもしれません。
条件4:クリニックの価値を高める提案ができる
クリニックの譲渡契約に際して、従業員を取り巻く労務関連、契約書をはじめとする法務関連など、クリニックの価値を高める磨き方を指南してくれるかどうかをチェックします。また、譲渡を決めた後も気を抜くことなく、M&Aの直前まで収入や利益が増加する方策を提案してくれるかどうかも大事です。業績の悪化はM&Aの交渉を不利にさせてしまいます。
条件5:医療業界に精通している
医療業界の動向を敏感に捉え、M&Aのベストタイミングを見極める目を持っていることは重要です。医療業界に精通していたり、ネットワークを広く持つアドバイザーのところには有意義な情報が多く集まってきますから、M&Aのタイミングの見極めなどの精度は高くなります。承継するクリニックの業界位置、特異性、医療業界独特のルールに従ってクリニックの価値を正しく判断し、より良い承継先とマッチングし、後々問題が起こらないように対策を練りながらM&Aを進めてもらえるアドバイザーがいいでしょう。
これらのポイントにさらに付け加えるならば、M&Aの最初から最後までそしてM&A後のフォローまでも一手に引き受けられる「ワンストップ」のサービスを提供してくれるアドバイザーかどうかです。
各専門家の境界で隙間ができると大きなミスに・・・
普段からクリニックM&Aに携わっていないアドバイザーに相談してしまうと、どうしても互いの専門分野の境界で隙間が生まれてしまいます。その隙間にある問題がカバーされることなく物事が進んでいくと、いつかきっと見落としが表面化してきますし、それが致命的なミスを引き起こす危険性もあるのです。
その点、専門家がチームとして動くワンストップサービスを提供するところなら、すべての領域を隙間なくカバーできます。穴ができにくく、仮に穴が見つかっても大事に至る前に素早く塞ぐことが可能です。
また、弁護士や保険会社、医療関係の業者など幅広い専門家とのコネクションやネットワークを持っているアドバイザーに依頼すると、いろいろな面での優遇が多方面から受けられるというメリットもあります。専門家たちが総力を結集してM&Aや開業を「成功」へと引っ張ってくれるのです。
私の事務所では、ワンストップで医療業界に長けたM&Aアドバイザリーを別会社として設立し、多くの開業医から相談を受けています(MARKコンサルタンツM&Aセンター http://www.markmacenter.com)。信頼が置けて、クリニックの経営に明るく、顧客のことも深く理解して、医療業界にも詳しいアドバイザーなら、困ったときに助けてくれるだけでなく、困らないようにも目をかけてくれるでしょう。そういうアドバイザーが近くにいるというのは、初めてM&Aに臨む開業医にとって大変に心強い味方になるでしょう。