1週間後が試験の場合、勉強のサイクルはどうする?
前回の記事、『「まじめにコツコツ勉強する子」の成績が伸びない根本的な原因』で、集中学習は効果が薄いので、復習は何回かに分散してやったほうがよいと説明しました。すると、今度はこんな疑問がわいてきますよね。「どれくらい間隔を空ければいいの?」
数時間でしょうか? 数日? 数週間? じつは、これについても実験が行われ、テストまでの間隔によって変わることがわかりました。
●1回しか復習する時間がない場合、いつが効果的か?
2008年、ニコラス・セペダとダグ・ローラーが1354人もの被験者を対象に実験を行い、その結果をまとめました。それによると、1回目に学習してから試験までの期間のおよそ20%程度の時間が経過したときに2回目を学習するのが効果的とのこと。そして、試験までの期間が長いほど割合が減少するそうです。
具体的には、最も成績がよかったのは次のタイミングとのことです。
1週間後に試験:1~2日後に2回目を学習
1ヵ月後に試験:1週間後に2回目を学習
半年後に試験:3週間後に2回目を学習
1年後に試験:1ヵ月後に2回目を学習
●何回も復習できる場合、どの間隔が効果的か?
また、これよりもはるか前の1980年代前半、ピョートル・ウォズニアックという研究者が、効率の良い学習サイクルを見つけるための実験を行っています。彼は自分が英語を効率よく学ぶための最適な学習間隔を見つけようとして、自身を実験台にしました。
学習しなければならないものを3つのグループに分け、それぞれ間隔を空けてテストをし、覚えていられる時間をデータとしてまとめたのです。その結果、一度学習したことは2~3日は覚えていられることに気づきました。そして、学習した翌日に一度復習すると、覚えていられる時間が1週間に延びました。1週間後にまた復習をすると、今度は1ヵ月覚えていられるようになりました。
ニコラス・セペダの実験は、もし1回しか復習しないとしたらいつやるべきかを示しています。当然1年後の試験までに1回しか復習しなければ、テストではまともな点数は取れません。「他のタイミングで復習するよりはマシな結果になる」というだけです。
それに対してウォズニアックの学習サイクルは、複数回復習することを前提に、覚えた内容をそのままほぼ覚えていられる期間を調べたものです。条件設定は違いますが、両方を合わせて考えると、だいたい1日後・1週間後・1ヵ月後に復習するとよさそうだということが見えてきますね。
もちろん、特に大事なことでしたら、もっと繰り返し繰り返し学習すればより定着します。しかし、それには学習計画の管理が複雑になるというコストがついてまわります。それとのバランスを考えれば、計画的な復習は2~3回くらいで終わらせるというのが妥当なラインではないでしょうか。どうせ模試などでまた出てきて復習する機会が必ずありますから。
●等間隔に復習するのも効果アリ
なお、近年の研究では、間隔を徐々に広げるよりも、等間隔なほうが記憶に残りやすいことを示す結果も出ています。ただし、等間隔に復習を割り振ろうとすると、ゴールを設定して、そこまでの期間を等分しなければいけません。そのゴールは目前の小テストか、少し先の模擬試験か、遠くの入試か、どれにすればいいのでしょうか?
ちょっと困ってしまいますよね。ということで、このあたりはあまり「完璧」「最高」のやり方を追求したりせず、「細かいことは考えなくても、分散してやれば効率がよくなる」くらいに考えておきましょう。
最後になりますが、実際に子どもに複数回に分けて学習させようとすると、やるのを忘れていたということが多発します。宿題(2回目の学習)をさせて、時間を空けて解き直し(3回目)までさせるだけでもどれだけ大変かは、教師も保護者もよく知るところです。
この「分散学習」は誰にでもできそうなことですが、ちゃんと子どもにやらせるのはそれなりに難しいものです。そう考えると、自己管理ができる子に育てることが、やはり最も大切なことですね。
勉強はまとめてやらずに分散させよう。基本は1日後・1週間後・1ヵ月後の3回。1週間後・2週間後・1ヵ月後のようにやってもOK。やり忘れないように予定を管理することが一番大事。
菊池 洋匡
中学受験専門塾 伸学会 代表