頑張っているのに成績が伸びないのは、学習法が正しくないからです。たとえば、10回も20回も漢字の書き取りをする、蛍光ペンやアンダーラインを引きながら読むといった学習法は非効率であることが科学的に証明されています。ここでは、中学受験専門塾「伸学会」の代表・菊池洋匡氏が、小学生のお子さんの成績を速やかに効率的に伸ばす勉強法を紹介します。※本記事は『「記憶」を科学的に分析してわかった 小学生の子の成績に最短で直結する勉強法』(実務教育出版)から一部抜粋・再編集したものです。

学習成果に差がつく「ブロック学習」「ランダム学習」

★家では解けた問題が模試だとできない。

 

★できなかった問題の解き直しを家ですると、「何だ、こうすればよかった」とすぐ気づく。

 

あなたのお子さんにそんなところはありませんか? じつは、これは成績がなかなか伸びない子の多くに共通するパターンなのです。

 

●出題範囲が広くなると成績が下がる…

 

中学受験本番では、「この問題はつるかめ算ですよ」なんてことはどこにも書かれていません。ですから、「そもそも、この問題は何なのか?」を見破る力が必要になります。「この問題は面積図で解く。なぜなら、つるかめ算だからだ」「この問題は主人公の気持ちを書く。なぜなら物語文で『なぜ』と理由を聞かれているからだ」というように。

 

 

お子さんはカリキュラムテストやマンスリーはできるのに、公開模試やサピックスオープンになると成績が下がったりしていませんか?

 

それはこの「見破る力」の不足が原因です。そういう子は入試では不合格になってしまいます。悩まれて塾の先生に相談されても、多くの場合は「カリキュラムテストでちゃんと成績を取っていれば、公開模試の成績も伸びてきます」みたいな返事ばかりです。

 

中には待っていれば伸びてくる子もいますが、残念ながら多くの場合はそうはなりません。ほとんどの子はいつまで経っても成績が上がらず、6年後半になるとむしろ下がり続けます。なぜなら、成績が上がらないのは勉強のやり方が間違っているからです。その間違いが直らない限り、力はつきません。

 

●同じ学習量でも2倍の定着率の反復法

 

多くの子は、単に繰り返しやれば力がつくと思っています。確かに学習の基本は反復練習です。それは間違いありません。しかし、じつは反復のやり方次第で、成果に大きな差が出るのです。それを示す実験に、例えばこんなものがあります。

 

2007年、サウスフロリダ大学のケリー・テイラーとダグ・ローラーは、24人の小学4年生(男子女子それぞれ12人ずつ)を対象に、算数を教える実験を行いました。下記の図のような角柱の面・辺・頂点・角の数を求める計算方法を教えます。そして、練習として4種類各8問ずつ、合計32問の問題を解かせます。その際に、24人を2つのグループに分け、問題を解く順序を少し変えさせます。

 

[図表]ケリー・テイラーとダグ・ローラーの実験

 

半分の生徒には面・面・面……辺・辺・辺……のように同じ種類のブロックごとに解かせました(ブロック学習)。残り半分の生徒には、面・角・頂点・面・辺・角……のようにランダムな順序で解かせました(ランダム学習)。まったく同じことを教え、まったく同じ問題を、まったく同じ数だけ解かせました。違いはただ1つ、解く順序だけです。

 

翌日、子どもたちに4種類すべての問題を1問ずつ出題するテストをしました。その結果2つのグループの成績には顕著な差が表れました。ブロック学習をしたグループの正解率は38%だったのに対し、ランダム学習をしたグループの正解率は77%だったのです。

 

このような違いが生まれる理由は、ブロック学習だと、流れ作業で「さっきと同じ解き方」をすればいいから、どういう問題のときにどの解法を使えばいいかを考えないためです。人は頭をよく使うほど記憶に残る性質があります。頭を使わない流れ作業では、記憶に残らないのです。加えて、どういう問題のときに…を考えていなければ、解法を「見破る力」も育ちません。2つの理由が重なって、成績に顕著な差が表れたのだろうと思います。

 

●解く順序を変えるだけでどんな科目も成績アップ


問題演習の順序を変えるだけで、成績に大きな差が生まれます。この学習法の違いは、算数だけではなく英語・国語・理科・社会、はては美術・音楽・体育まですべてにあてはまります。例えば、美術においてはこんな実験が行われました。

 

ウィリアムズカレッジの認知心理学者ネイト・コーネルは、12人の風景画家による絵画を6作ずつ計72枚使って、作者を判別する「目利き力」を鍛える学習の実験を行いました。

 

その際に、風景画家を6人ずつに分け、先ほどの角柱の問題と同じように、学習する順序に違いを作りました。そして、学習には使わなかった同じ作者のほかの絵画48作を使って、12人の中から作者を答えさせるテストを行いました。見たことのない絵ばかりなので、その画家の描き方の「スタイル」がわからなければ答えられないテストです。


結果は、ブロック学習で学んだ6人の画家の絵画は正答率50%だったのに対して、ランダム学習で学んだ6人の画家の絵画は正答率65%でした。同じ被験者たちが、学習法を変えただけで正答率にはっきり差が出ました。角柱の問題と同様に、絵画の学習でもランダム学習のほうが高い成績を出したのです。

 

 

●多くの人は自分の感覚に騙されている

 

さらに驚くべきことですが、この実験のあとに被験者に行ったアンケートで、78%の被験者、つまりおよそ5人に4人が、なんと50%しか正解できなかったブロック学習のほうが「よかった」と回答しています。恐ろしいことに、実際には力がついていない学習法のほうが、本人たちの体感としては「わかりやすかった」と感じているのです。世の多くの人間が、自分は成長していると信じながら、実際には成長が遅い学習法を実践しているであろうことを示していると思います。

 

わかった「つもり」になるブロック学習をしていると、「模試になるとできない」を続けることになってしまいます。ランダム学習で「見破る力」を鍛えつつ、記憶への定着を図ってくださいね。

 

【まとめ】

同じような内容を集中的に学習するのは効果が薄い。一見わかりにくそうだが、ランダムにいろいろなことを混ぜて学ぶと学習効果が大きい。自分の感覚に騙されないように気をつけよう。
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「記憶」を科学的に分析してわかった 小学生の子の成績に最短で直結する勉強法

「記憶」を科学的に分析してわかった 小学生の子の成績に最短で直結する勉強法

菊池 洋匡

実務教育出版

マジメにやっているのに成績が伸びない…。もしかして、お子さんはこんな勉強をしていませんか? “テキストに蛍光ペンで色を塗ったりしながら読む” “漢字の書き取りを何回も繰り返す” “テスト前日に一夜漬け” お…

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