いわゆる「老後資金2,000万円問題」から早1年。資産形成の重要性が問われ、実際にアクションを起こした人も多いだろう。一方で何をしていいのか分からず、ただ不安だけが膨らんでいる人もいるのではないだろうか。いま一度、老後を見据えた資産形成について考えてみよう。

副業解禁…本業以外で老後資金は作れるのか?

さらに「働き方改革」も、資産形成を考えるうえで見逃せないトピックスだ。2018年、政府は「モデル就業規則」を改訂し、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」の規定を削除。副業・兼業に関する規定を新設したことで、「副業元年」と呼ばれたのは、記憶に新しい。それにより、資産形成の手法の幅も広がったというわけだ。

 

しかし実際は、多くの企業で二の足を踏んでいる。副業を認めていない企業のほうが、圧倒的に多い。「逆に長時間労働を助長するのではないか」「人材の流出につながるのではないか」など、様々な疑念が企業の判断を妨げている。

 

また副業が解禁されたからといって、素直に喜んでいいとも限らない。副業を認める代わりに、企業側は最低限の給与しか保障しない、すなわち、本業での収入減につながる可能性は大いにありうる。また本業の勤務時間以外の時間を副業に充てれば、全体的に労働時間が長くなり、健康管理が難しくなることも考えられる。健康を害してしまえば、副業ばかりか、本業にも影響を与えるだろう。

 

副業も難しいとなると、コツコツと預貯金を、と考えるのが日本人的な発想だろう。実際に預貯金だけで老後資金を確保するには、月々どれくらいの負担を考えればいいのだろうか。都内勤務の30歳の会社員を例に、老後資金2,000万円をつくることを考えてみよう。


厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査」によると、都内勤務の30代男性会社員の月々の手取り給与は30~34歳で25万円強、35~39歳で30万円弱となる(図表4)

 

出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査 」 ※10名以上の企業対象 ※数値は所定内給与額
[図表4]都内勤務30代の平均月給 出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査 」
※10名以上の企業対象
※数値は所定内給与額

 

仮に、ほぼ金利0%の預貯金で、30年間で2,000万円の老後資金を作ろうと試みる。

 

月5万円→60歳 18,000,000円
月6万円→60歳 21,600,000円
金融庁「資産運用シミュレーション」による

 

月々5~6万円の預貯金で、クリアできるというわけだ。この金額を余裕と捉えるか、それとも困難だと捉えるか、置かれている状況によってさまざまだろう。一方で年3%で運用できたらどうだろうか。

 

月3万円→60歳 17,482,107円
月4万円→60歳 20,821,482円

月5万円→60歳 29,136,844円
月6万円→60歳 34,964,213円
金融庁「資産運用シミュレーション」による

 

コツコツと預貯金するのに比べ、1,000万円以上の差となる。安定した資産形成のためにも、投資は不可欠だといえるだろう。そのような事情から、会社員でも無理なく資産形成が行える投資手法として、注目が高まったもののひとつが不動産投資である。

 

不動産投資が老後資金の形成に適している理由として、① 他人資本で投資できる、② ローン完済後に安定した収入を得られる、③ インフレリスクに対するリスク分散となる、➃ (管理会社に運営を任せれば)手間がかからない、などの理由がある。メディアでも「会社員に適した資産形成法」として取り上げられることも多い。

 

冒頭の木下不動産、取締役営業本部長の沖村佳昭氏は、年金不安から不動産投資に目を向ける人たちに、こうアドバイスをする


「先行き不透明な世の中だからこそ、早期に準備をする事が大切です。金融教育のない日本では、手軽に始められるだけでなく、安定性・将来性のある商品の選択が重要ではないでしょうか」

 

大きく資産を増やそうとすればするほど、当然、リスクも大きくなる。まずは自身がどれくらいのリスクを許容できるか、判断することが肝心だ。

 

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